卒業試験後の班発表の日、は机に突っ伏してぐっすりと眠っていた。







「たまに思うのよね。って、繊細なのか図太いのかわかんない。」








 班発表が気にならないのか。




 ざわつく生徒の様子を見ながら、サクラはつぶやく。


 の隣に座っているサスケも、正直同じことを思う。

 たぶん卒業できたことにはしゃぎ、気持ちが昂ぶって眠れなかったのだろう。



 昔からと仲の良い兄が、“あいつははしゃぐと夜眠れない”と漏らすのを聞いたことがある。

 繊細図太い関係なく、ただ眠いだけだ。

 イルカが諸注意を読み上げていく。







「この後から上忍が迎えに来るからな。」








 そう告げてから、班員を読み始めた。


 それぞれ歓声や、落胆の声が上がる。








「七班は、ナルト、サクラ、サスケ、それとは暗部からの要請も多いだろうから、別働隊になる場合もある
が・・・・」

ちゃん寝てますー、」







 一人の生徒が手を挙げて申告する。

 は未だに寝ていた。







「おーい、ちゃーん?」







 ナルトが呼ぶが、はちっとも動かない。

 相変わらず机の上に突っ伏したまま。







、起きろ。」






 仕方なく、隣でほおづえをついていたサスケが、を揺さぶる。

 するとやっと身体を起こして着物の袖口で目元をこすった。








「う?・・・ぁぅ・・?」







 全然状況を把握できていないらしく、はぼんやりと首をかしげ、ぼやけた瞳を向ける。

 イルカが苦笑した。






「サスケ、後で言っておいてくれ、」









 諦めたらしい。



 次の話に移っていった。



 はしばらくすると、机に吸い寄せられるようにまた突っ伏して眠りなおした。

 くーくーと穏やかな寝息を聞きながら、サスケらは担当上忍を待つ。

 それぞれ上忍が班員を連れて行く。

 だが、サスケ達を迎えに来る上忍はいない。


 とうとう一班だけ取り残された。







「ねー、来ないね。」








 サクラが不満げに言う。








「最初から遅刻ってどうなんだってばよ。」







 ナルトが目を細ーくして、ため息をついた。


 サスケは黙ったままだ。

 は彼らの焦りや、不満など知らないようにまだ眠っている。

 一時間ほどして、やっと担当上忍が現れた。







「やぁ、君たちが七班?」








 担当上忍は、へらへらした銀髪の男だった。

 笑みが軽薄そうにも穏やかそうにもとれる。








「いや、すでにここには私たちしかいないんですけど。」






 サクラが思いっきり眉を寄せて言い返す。








「悪いね。忙しくて。」







 ちっとも悪いと思っていない様子で、男は答えた。

 そして、サスケをちらりと窺ってから、眠っているのほうに歩み寄る。







「姫宮様はおねむだねー。噂はかねがね。」







 探るように視線を上下させるが、は全く起きない。

 彼は、暗部で一緒に仕事をしていた斎と蒼雪の娘である噂は、かなり聞いている。

 上層部は、病気がちだったが快復したに、かなりの期待を寄せている。


 それとともに彼女の力に警戒もしている。




 だから自分に達を預けた。



 七班は、九尾のナルト、うちはのサスケ、雪花姫宮、そしてくの一のトップのサクラ、言ってしまえば期待の星をより集めた集団だ。

 だが、見る限り、一番期待を寄せられているは、ただの穏やかに育った育ちの良いお姫様らしい。

 未だ眠っている。







「おい、、いい加減にしろ。」







 見るに見かねたサスケがまたを起こしにかかる。



 やっとが目を覚ます、

 相変わらず眠そうに目元をこすって、見覚えのある男を見上げる。









「あ、カカシさん。」

「久しぶりだね。、」









 カカシは、さわやかに笑った。



 カカシの師だった四代目火影との父・斎は同じ師についた兄弟弟子で、カカシは初めて暗部に入ったとき、斎
の下で任務をしていた。

 その関係で、何度かの家を訪れたことがあるのだ。








「まさか、君の担当上忍になるとはね。」

「たんと・・?」







 何も話を聞いていなかったは、首をかしげる。






「相変わらずだね。まあいいよ。」






 カカシは、今度はの他の3人に目を向ける。








「明日からの任務の説明をする。」








 それぞれが気を引き締めるように顔色を変えた。

 はぼんやりと小首を傾げ、カカシを見上げる。











「任務?ゴミ拾い?」







 下忍の任務の内容についてはいろいろ聞いているのだろう。

 だが、彼らはまだ、正確には下忍ではない。



 アカデミーを卒業した、と言うだけだ。







「サバイバル演習だ。」

「サバイバル演習?」

「なんで任務で演習やんのよ?演習なら忍者学校でさんざんやったわよ!」








 意味がわからない。

 ナルトとサクラが訝しむ中、はますます首を傾げていた。







「さばいばる・・・・・?・・」









 まずその意味を理解していない。



 サスケはをあきれた目で見る。

 緊張感のかけらもない。

 カカシは楽しそうに笑う。







「卒業生28名中、下忍と認められるものはわずか10名程度。」

「それ以外は?」

「アカデミーに逆戻り。」







 カカシの言葉に、ナルト、サクラ、サスケは表情をなくす。







「それもいいかも・・・・、」







 は小さくつぶやく。


 それを全く無視して、カカシは言った。







「とにかく、明日は演習場でおまえらの合否を判断する。忍び道具一式もってこい。それと朝飯は抜いてこい・・
・・吐くぞ!」







 言い終わってからそれぞれにプリントを渡す。



 以外の3人はそのプリントを熱心に見つめた。



 は一瞬ちらりと見ると、それを肩の上に止まっている蝶に向ける。

 淡い燐光を放つその白い蝶は、炎の固まりであることを示すようにひらりと揺らいで、鱗粉を放つ。

 それがプリントに触れたとたん、黒色の灰を散らして宙に消えた。

 その瞬間を見ていたサスケが目を見張る。







「本気で、するの?」








 がきょとんとして、カカシを見上げる。

 カカシはため息一つで頭を掻いた。







「んー、の本気には、あまり当たりたくないかな。君、能力の制御甘いでしょ。」

「うん。すごくもてあましてる。」







 素直に、は頷く。



 イタチに半分のチャクラを肩代わりしてもらってはいるが、のチャクラは半分であってもものすごく多い。

 また、とても特殊なチャクラで、他人のチャクラを術ごと焼いてしまう。

 防ぎようがない。








「ま、それだけじゃないし。うん。は斎さんの娘だから、大丈夫だと思うよ。」





 演習の本当の意味を知らずとも、心のままに立ち回れば、彼女は大丈夫だろう。

 しかし、他の3人は違う。

 そして、今、理解すべきだ。




 本当に忍びに必要なものとは何なのか。







( 何人かで 組になること 仲間で集まったその小隊 )