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「楽勝っぽいじゃんなぁ。」




 キバは笑いながら手をふらふらとさせる。




「一応なんかばらばらに隠れてるらしいぜ。仲間割れしてるんじゃね?」




 鼻がきくためキバにはすでにすでに三人の居場所が把握できている。

 あとは班長であるシカマルの合図によって、襲撃するだけ。




「油断するな。向こうは学年トップのサスケだ。」




 シノは慎重を帰するようにキバに求めるが意味がない。

 元々好戦的な性格だ。

 優勢だと考えれば、喜び、それ以上に追い詰めたくもなる。




なんて脅したら鈴くれそうじゃね?」

「・・・・・は結構根性あると思うけどな。」




 キバの笑いに冷静にシカマルが突っ込む。




「何でだよ。どう考えたって気弱っぽいじゃん。」

「キバ、気弱と芯がないって別の話だぜ。それに、女ってのは総じて強いもんだ。」




 自分の母親を思い浮かべながら、シカマルは大きなため息をつく。

 腹を決めたら最後、全くといって良いほど動かない。

 それが女だ。

 子供のため、夫のため、弱くありながらもその心に芯を持つ。




「確かに、警戒はしないとね。ってそもそも炎一族の宗主令嬢でしょ?」




 ばりばりと一人のんびりポテチをかじるチョウジが、空にポテチをかざす。

 それにシノは神妙な顔で頷く。


 確か炎一族には一族特有の血継限界があるはずだ。

 用心に越したことはない。

 だが、そう言う意味で言ったつもりでなかったシカマルは、渋い顔で髪をかいた。




「あー、面倒くせぇけど、の母親は炎一族宗主、父親は確か火影候補だ。」

「火影候補!?」





 キバは全く知らなかったのか目を見開いて叫ぶが、シカマルとシノは上忍達のうわさ話で聞いた
ことがあった。

 アカデミーの生徒達の親よりもまだ若いその男は自来也の弟子で四代目火影の懐刀と言われた天
才だという。




『ありゃ、本当に神に愛されたお方だ。ま、性格は問題だがな。』




 素行に問題ありだと言うが、実力主義のシカマルの父をそう言わしめる天才。




「蒼斎って言って、三忍の自来也様のお弟子で、四代目火影の側近だったとかって親父から聞いた
ぜ。」

「へぇ、会ってみてぇな。そりゃ。」





 キバが期待に目を輝かせる。




「そういや、、親来るって言ってなかったっけ?」




 チョウジが口の中にポテチを放り込む。




「まじで?ちょうど良いじゃん。」




 火影候補と言われれば、やはり里の忍にとってはあこがれだ。

 火影は里の長であり、あこがれの頂点なのだから。


 だが、あまり過度の期待は禁物である。





「・・・・・斎さんは、見た目は普通だがな。」

「言ってやんな。どうせ現実をしるさ。」




 シノのもっともな台詞を打ち消して、シカマルは面倒くさそうに頭をかく。


 英雄なんて言っても所詮は人間だ。

 キバはそれをすっかり忘れていた。

















 その頃自分が噂になっていることなんて知らない斎は、紺色の瞳を水色の透先眼に変えて、娘達
を観察していた。


 千里眼という便利な力を持つ透先眼という血継限界は、自分の見た場所から何qにも渡って光景
をそこで自分が立って見ているように映像として見ることが出来る。

 忍としては非常に有益な能力だが、はかり間違えばただのプライバシーの侵害、むしろ、犯罪の
勢いだ。

 斎にはそんな感じはないだろうが、何かプライベートをのぞかれているかんじで、イタチは師の
その能力があまり好きではなかった。




がサスケを叩いたよっ、」




 興奮した様子で斎が言う、

 その台詞に、イタチは飲み始めていたお茶を吹き出しそうになった。




が?!」




 超のつく平和主義者。

 他者に文句を言うのが苦手。


 自己主張がない。


 あまり人とのふれあいをしてこなかったせいか、自分の意見を通すと言うことを知らないが、
他者を叩くなど信じられない。

 サスケは一体何をしたのかと、弟ではあるがサスケに苛立ちを覚える。





「イタチ、殺気は弟に向けるもんじゃないよ。」

「気のせいじゃないですか?」




 イタチは絶対零度のほほえみを斎に返す。




「あらあら、喧嘩ですの?」





 蒼雪は興味深そうに穏やかに尋ねる。 

 の喧嘩の話か、それとも今の凍り付いた空気の話か。

 ひとまず斎は前者と取ることにした。




「なんかね、サスケが勝手な行動してたのがにとってはもの凄い不安だったみたいだよ。」

「緊張してましたものね。」




 斎も蒼雪もが失敗しても怒る気などさらさらないが、は考え方が真面目だ。

 もう少し手抜きしても良いと思うのだが、斎の温厚なところと蒼雪の真面目なところと言う両親
の良いところだけをあますことなく受け継いだは、気質として心配性できまじめだった。

 年がたてば穏やかさに変わるのだろうが、まだ不安と緊張ですぐに失敗してしまう。




「気楽にやればいいのにねぇ。例え成績がどべでも気にしないのに。」




 斎はぽつりと呟く。




「何が悲しくて紙切れ一枚で怒髪天をつくほど怒らないといけないんだろうね。」




 理解できない。


 それは彼の心からの気持ちだ。

 忍の善し悪しなど、実際に忍になってからでないとわからないものであって、アカデミーの遊び
のような演習の成績が実戦に反映される方が少ない。

 成績表という点で行くと、斎はアカデミーの授業を睡眠時間にして、夜中ゲームに勤しんでいた
から、下から2番目だった。


 所詮アカデミーの成績なんてそんなものだ。

 ところがいつも子供の成績で一喜一憂するフガクは熱いお茶を膝の上に零して、あたふたした。

 斎はそれを見なかったことにする。




「イタチだって生意気じゃんね。」

「生意気と成績は全く関係有りませんから。」




 斎の軽口に、イタチが切り返す。




「わぁ、怖い。」




 わざとらしく怖がって見せて、ころころと斎は笑う。




「そうだねぇ、生意気でも僕の可愛い弟子だもん。」

「まぁそれがイタチさんにとって不利益でなければよろしいけど。」 




 蒼雪が鋭い突っ込みを入れて、ほぅっと悩ましげに息をはき出す。




「みんな酷いな。僕がまるで悪者みたいじゃないか。」

「悪者って言うか怠け者、ですかね。」

「良い例えですわ。イタチさん。もしくは愚者、みたいな?」

「最近ふたりして共謀して僕を虐めるよね。酷くない?」

「貴方もいい加減こりませんこと?」

「だーってぇー。」





 斎は子供っぽく頬を膨らませて、手をばたつかせる。


 くまさんパーカーも相まって本当にだだをこねる子供のようだ。




「朝起きてくるだけで事足りるんですけどね。」

「それがむずかしいだもん。」

「何が難しいんですの。そうですわ。毎日起きてくるのが一秒遅くなるたびに髪の毛を一本ずつ燃
やしましょうか?」





 蒼雪は肩に止まる自分の能力の化身である炎の鳥の首筋を撫でる。

 白い炎の鳥は頭に緩やかな鶏冠がついており、尻尾が優美に長い。

 鳥は主に答えるようにきゅうんと鳴いた。




「・・・・そんなことになったらきっと一年で髪の毛がなくなるでしょうね。」

「イタチ、一年ももたないよ。雪は細かい制御が下手なんだから、一日でなくなるって。」




 炎一族の宗主というのは多少差はあれども大方莫大なチャクラを持って生まれてくる。

 故にもそうだが、蒼雪も細かいチャクラの制御が苦手だった。


 そのために医療忍術が得意でチャクラコントロールのうまい綱手を師とした経緯がある。

 それも感情に左右されればなおさらである。




「常日頃の恨みが籠もっておりますもの。」

「奇遇ですね。俺もたまにバリカンで先生の頭を削りたい衝動にかられるんですよ。」

「あら、私もですわ。むしろ片腕ぐらい削りたいかも。」




 恐ろしいことをさらりと言って、蒼雪とイタチはほえほえと微笑む。

 お互い腹の中が真っ黒であることは、よく知っている。




「なんさぁ。イタチと雪ってどうしてそんなにうまくいくわけ?」




 斎がもの凄く不思議そうに息ぴったりの二人を見て、悩む。

 そしてぽんと自分の手を叩いた。




「要するにさ。ふたりとも外見爽やか、中身真っ黒ってことでしょ?」




 イタチも蒼雪も綺麗に猫をかぶり、表向きには人当たりも良く穏やかだが、中身は真っ黒だ。

 性格的な部分が二人は似ているから、仲良く喋れるのだろう。

 うん、と自分の出した答えに満足いったらしく、斎は何度も頷く。

 だが、当然逆鱗をかう。




「何がですの?人聞きの悪い。」

「そうですよ。」




 爽やかな、清々しい笑顔を浮かべた二人が、斎に詰め寄った。











似たもの同士の共同戦線