「うっ、く、だ、」




 はぐずるようにうめいて、手をふらふらさせてイタチの肩を押す。

 弱々しい腕の力はイタチを遮ることなど出来ようもなく、ぷにっと胸の先端を指で押しつぶすと、鋭い悲鳴を上げた。

 それが狭い浴室に響いて、イタチは軽く目を閉じて彼女の胸元に唇を落とし、痕を軽くつけていく。




「う、ゃ、い、」




 水中にある彼女の下半身を軽くゆすると、ぬるりとした感触と共には痛みと熱を訴える。

 まだよく感じると言うことが分かっていないのか、声は泣きそうに怯えていて、けれど体の方は欲しているのかたまに自分で腰を揺らす。




「痛い、か?」




 濡れた長い紺色の髪を掻き上げて、イタチは極力優しい声音を心がけて問うた。

 狭い浴槽内で向き合って体を重ねているため、苦しげに眉を寄せて涙を目尻にためるの赤い顔が目の前にある。

 昨日の今日だし、水中で体がほぐれているとは言え、辛いかも知れないと気遣えば、は僅かに頷いたが、同時に熱も感じているらしかった。

 体の中にいるイタチが少し動くだけで中がぎゅっとイタチをかみしめるように締め付ける。




「ふっ、ぅ、ん、ん、」




 イタチが動かないように気をつけていると、はうっすらと目を開けてイタチを見た。

 涙で濡れる紺色の瞳は酷く扇情的で、熱に溺れきっている。

 イタチは口元を必死で押さえている小さな手をとって、自分の指と絡めると水の中に一緒に下ろしてしまう。

 はそれに気づいて不安げにイタチを見上げてきた。




「い、たち」




 助けてと懇願するような眼差しに、酷くそそられる。

 熱の正体がまだよく分かっていないは、感じてはいるらしく昨夜と違ってかなり濡れていて、結合部に触れれば水とは違う感触が手につく。




「ひっ、ぁ、やっ、やだぁ!」




 イタチが彼女の体を軽く揺すると、は必死で首を振ってイタチに否を示す。




「痛くは、ないだろ?」

「やっ、」 




 痛みは薄れているはずなのに、は何度も首を振る。

 の中はまだ狭いし熱く、イタチが動いたのが気持ちよかったのか、触れあっているの太ももがぴくん、ぴくんと揺れて、そのたびにきつくイタチのものをかみしめていた。

 心地よいが、それはイタチがイける程の刺激ではない。




、動いても、良いか?」




 これ以上じらされるのは出来れば避けたいと思ったが、はつないだイタチの手をぎゅっと握りしめて、目をきつく閉じ、首を振る。




「だ、だめっ、」

「何が駄目なんだ。」




 イタチはの片手をはなし、その手での耳元の髪を掻き上げながら、かぷりと軽くの耳たぶを噛んだ。





「うごい、ちゃ、だめ、」

「何故?」




 問いかけながら、もう一度今度は大きく揺らした。




「ひぃっ、」




 の声がうわずって、白い体が面白いほどはねて、イタチの目の前に細い喉元を晒す。




「おまえ、押し込む方が良いのか。」





 イタチは唇の端をつり上げて、の体を宥めるように背中を一度撫でた。

 痛みは快楽を感じれば薄まるものだ。それは医学的にも証明されていることで、も昨晩のように痛みに耐えられなくて泣きじゃくるほど、痛みを感じているわけではないようだ。

 そして、はかなり感じやすい体をしているらしい。




「ゆっくり、な?」

「だ、だめぇ、ひっ、」




 イタチはをゆっくりとだが、規則的に揺さぶる。

 ゆっくりとはいえ、下からの震動はには刺激が強すぎるらしく、泣きじゃくりながらイタチの首に腕を回した。

 ちょうどこの体勢では、の中の上あたりに直接当たるらしく、は随分とそこが弱いらしく、少しすられるのも嫌がる。

 だが、下から突き上げればそこにちょうどあたるので、目を見開いて泣きじゃくった。

 ぐっとの爪が肩に食い込むけれど、それも気にならない。

 は引く時よりも押し込む時の方が感じるらしく、深く交わることになる座った体勢に酷く弱いようだった。




「ひっ、だ、だめっ、ひっぅ、やぁ、」




 ゆっくり怖がらせないように軽くの感じるところを抉れば、声を上げていたが突然体を震わせ、中をこちらが痛いほどにぎゅっと締め付けて、一際甲高い声を上げた。


 そのままくたっとは体の力を抜き、ずるりと後ろ向けに倒れそうになる。

 それを支えながら、イタチはくすくすと笑った。




「二回目で中でイくなんて、恥ずかしい奴だな。」




 言葉でけなせば、はびくりと反応し、また目尻に涙をためるが、やはり先ほど以上にその瞳はぼんやりとしていた。




「こ、わい、」




 噤んでいた言葉、は口にする。




「い、いや、こわ、いぃ、」




 先ほどまで言葉を言わないようにと必死に堪えていたのか、ぼろぼろと涙が溢れると共に、ことばがぽろぽろこぼれ出す。

 そしてイタチの肩を震える手で何度も押し返した。




「何が、怖いんだ、」

「ひっ、あつ、い、変な、かん、じ。こわ、」




 イタチが怖いと言うよりは、分からない感覚が怖いらしい。

 それが感じていて、イくと言うことだが、まだそれがよく分からないにとってその感覚自体が恐怖なのだろう。




「怖くなんて、ないさ。気持ち良い、だろ?」

「よく、ない、こわ、ぃ、ひぁ、」




 またイタチのものをかみしめたのだろう。

 はまだイくと言うことを気持ちが良いとは認識できないのだ。

 すべてを持って行かれる感覚が恐ろしいのか、しゃくり上げて肩をふるわせて泣き出してしまう。

 しかし自分の不規則な呼吸と揺れる肩がまた刺激になって、自分で体を動かし、自分自身の熱を煽っていく。




「ひっ、ぁ、や、やだぁ、くる、くるし、ひっ、」




 は頭の中がパニックになっているのか、どんどん泣く、体が揺れて締め付ける、熱を煽る、また頭がパニックになっていくという、悪いループを繰り返す。

 感じる場所をすられると言う激しい快楽は、まだにとっては恐怖の対象らしい。先ほどのように止まっている生ぬるい快楽が彼女にとってはまだ心地よいようだ。

 ただ、イタチはそういうわけにはいかない。




「少し、我慢、してくれ。」




 前途多難だとイタチは嘆息しながらも、を壁に押しつける。

 イタチが動いたことによる衝撃にはまたびくんと大きく中を脈打たせ、涙をたたえて怯えきった目でイタチを見上げている。




「ごめんな。」




 言って、同時にの体の奥を突き上げる。

 彼女の紺色の瞳は何が起こったのか分からないという目で、イタチを一瞬丸く映してから、大きく痙攣した。次の瞬間の表情はくしゃりと歪む。

 酷い締め付けにイタチは目を閉じてやり過ごし、再び奥へ奥へと進むように中をがつがつと突き上げていく。




「はっ、ん、っ、」




 飢えた獣のようだなと思っても、早く終わらせてやるのがのためだと、イタチは理解していた。



貪欲 ( すべてを欲すること )