で、結局書類の終わらなかった斎を抜いて、イタチ、サスケ、、ナルト、そしてサクラの5人で、甘味処とお好み焼き屋に行くことになった。
「お金はもらったから問題はないだろう。」
イタチとは並んで明かりのともる夜の商店街を歩く。後ろにはナルトとサスケ、サクラが歩いていた。
「結局父上、書類終わらないの?」
「終わるはずがない。」
はっきりとイタチはに答える。
「あの書類の量は先生が本気でやって、明日の昼だ。」
「あれが明日の昼には終わるのか?」
サスケも斎の書類の残量を見ていたが、斎のひろい執務机を埋め尽くしていた上に、彼の座高を軽く超えていた。
あれだけの書類が例え判子を押すだけだったとしても、明日の昼には終わりそうではない。
「終わる。斎先生なら出来る量だ。」
なれているイタチは既に彼の能力を正確に知っている。出来ると踏んでいるからこそ、無理矢理にでもやらせようとしたのだ。
「またためてたんだ。いつもだよね。」
は少し困ったように自分の父親の所業に眉を寄せる。
「だな。ま、もう慣れたが。」
イタチはぽんぽんと自分の肩を叩いて、息を吐く。
それでサスケは気づいた。
多分あの後、イタチも斎の書類を手伝ったのだろう。道理で明日の昼までに終わるわけだ。斎も処理が早いのは間違いないが、イタチもまた事務能力が非常に高い。
「そういえば、結婚式はいつになったの?」
「6月に鳳凰神社で、かな・・・。」
サクラの質問に、は僅かに頬を染めた。
やイタチに関わる里の忍をはじめ、イタチの両親であるミコトとフガクもその日だけは幽閉を解かれて結婚式へと出席できることになっている。
上層部へとコネクションを持つ斎と、蒼雪による配慮だ。
また首謀者であるフガクの幽閉が解かれることはないが、ミコトはもうそろそろ里から離れた家で暮らせるかも知れないと言うことになっており、軟禁に変わりはないが、徐々に状況は軟化しつつある。
「着物とかはどうするの?」
「えっとねぇ、それはうちはのおばちゃまと、母上が縫ってくれるって、布地に金の刺繍が入った綺麗な布なんだよ。」
結婚のための衣装は、幽閉されており時間があるイタチの母ミコトがほとんどを担っている。慣れないことで大変だと話していたが、裁縫になれているの母蒼雪の指南もあり、どうやら吉日には間に合いそうだと言うことだった。
「母上家出してたから、炎一族にとってもうかれこれ30年ぶりくらいだっていってたかな・・・・」
歴史上、炎一族には女の宗主が何人かいる。
資格が白炎使いであるというその能力であり、男女分け隔てなく与えられる傾向が強いため、女と男、どちらであっても宗主として敬われるのだ。
ただし、の母蒼雪は結婚当時家出していた上、忍界大戦まっただ中であったため、大々的な結婚式は行わず、内輪だけだったと言う。
また、蒼雪の父白縹の時代は沢山の奥方を側室含め抱えていたため、逆にありふれすぎていた。
「1日目は儀式とかがほとんどで、二日目に一応一般的な披露宴があるから、退屈そうなら二日目だけで良いかもしれないな。」
イタチは笑いながら、ナルトを見る。
「儀式って何するんだってばよ?」
「そうだな・・・、昔の衣装を着て鳳凰神社とうちは一族の神社に参って、みそぎを受けたり、歩いたり、まぁ、そんなことばかりだな。」
イタチも既に式の内容は聞いているし、炎一族のやり方に基本的にこだわりもないので則ることにした。
ただ、うちは一族にも配慮したいというの両親の意向から、うちは一族の神社にも参ることになっている。
「わたしは十二単って言う昔のやつを着るんだよ。結構重いらしいけどね。」
ははにかみながら、サクラに説明した。
「ふぅん。あーでもが人妻か、なんか響きが良いわよね。」
「サクラ、その台詞は変だぞ。」
サクラにイタチが突っ込みを入れる。
「えー、良いじゃないですか。なんか卑猥で。」
「そのあたりはノーコメントで良いか?」
「あはは、ですよねー。」
サクラはころりと笑って、の手を握る。
「温泉のついでに短冊街に行くから、その時に何か一緒に結婚祝いを買おうね。」
「え?でも・・・」
「短冊街なら何でもあるわ。それに、男どもがいるんだから、金出さないなんて言わないわよね。」
「え?俺ら?」
ナルトが間抜けな顔で自分に人差し指を向ける。
と言うのもこの間の試合でも負けたため、今回の温泉旅行においてサクラとの宿泊費その他を払うのはナルトとサスケと言うことになっている。
「当たり前でしょ?まさか祝わないなんて言うの?」
「え、そんなことねぇってばよ!それにイタチ兄ちゃんにはすっげーーーお世話になったから、もちろん出すってばよ!!」
ちょっと厳しい出費であることに変わりはないが、祝う気持ちにも変わりはない。
財政は極めて厳しいが。
「でも久しぶりの長期休暇よーーー!」
サクラが手を振り上げて喜ぶ。
明後日から長期休暇が始まると思えば、気分も明るい。そしてしばらくすればの結婚式の用意で楽しくなることだろう。
「本当に、心が軽くなったね。」
も自分の胸元を押さえて柔らかく微笑む。
悲壮な決意も、悲しい過去も、苦しい大戦も、全部すべて過ぎ去った。の表情からはそれがうかがわれ、サスケは少し眉を寄せた。
自分のことで酷く彼女を苦しめたのは、よく知っている。
兄を苦しめた。そしてそれは同時にすべてに降りかかった。今でも泣きながら、ぼろぼろになってサスケに帰ってきてと縋り付いた表情を忘れたわけではない。
だからこそ、今の朗らかな笑みがイタチの隣で続いてくれることを何よりも願っている。
「こればっかりは仕方ねぇからな。」
サスケも髪を掻き上げて、大きくため息をつく。
「仕方ないって何よ。」
サクラがぴくりと眉を動かす。
「サクラ、」
「でもー・・・。」
「わたしは大丈夫だよ。」
言い聞かせるように、はサクラに言う。
必要以上に、サクラはを庇ってきたという。時には同じ班員を殴り諫められることすらあったけれど、それでも彼女はの精神面を庇い続けてきた。
そして多分、悲壮な決意をしたを誰よりも隣で見てきたサクラは、を守ろうと必死だったのだろう。
一人で抱え込んでしまいがちなを支えよう、抱えようと。
「サクラは本当に良い友達だな。」
イタチもそれをよく分かっているのか、良くサクラにそう言う。
「そうでありたいって思ってますよ。いつでも。」
サクラはの手を取り、少し恥じらって、でもそう言った。も笑って、サクラの肩に歩きながら軽く頭をもたせかける。
二人が共に歩くと、の背中が酷く小さく見えた。
抱擁者