短冊街はすごい賑わいで、人が沢山歩いており、また舶来の面白い物品も沢山売られていた。



「にぎやかだね。」



 はほんわりと笑って、隣を歩いているイタチに言う。



「そうだな。このあたりに来るのは本当に久しぶりだ。」



 イタチにとっても正直長期休みを取るなど数年ぶりで、久々のことだ。

 任務でこのあたりに来ることはあっても、休みで来ることは少なく、ましてや次の日の任務を気にせずに良いというのは、初めてのことだった。

 も女友達と来たことはあったが、こんな大人数で散策するのは初めてだし、今回はサイ、ヤマト、カカシ、サスケ、ナルト、そしてイタチとという明らかに男性の方が多いと言う不思議な男女比になっていた。

 この後温泉へ行く予定だ。



「最近もっと賑やかになったからね。」



 カカシが穏やかに笑ってとイタチに言った。

 忍界大戦が終わってから、忍界大戦で同盟した国々同士の通商は大幅に増えた。おかげでそう言った物品を取り扱う短冊街の賑わいは、ここ数十年で一番とも言えるほどとなっていた。



「そういえば姫の結婚祝いも買うんだろう?僕もお金を出すよ。だから欲しそうなものがあったら、遠慮なく言うんだよ。」




 ヤマトはに申し出る。




「え?でもあんまり欲しいものってないしな・・・」



 は困った顔で真剣に考える。



「ま。出来た時で良いよ。」



 カカシはの性格をわかりきっているため、あっさりと言った。



「そういや、昇進した時の祝いも似たようなこと言ってたわよね。」

「そうだっけ?」

「そうそ。1000円のケトルとか真剣にほしがってね。しかもお金を出す女子は四人もいてさぁ。昇進祝いにこっちも働いてんのにひとり250円?みたいな。」



 サクラはさらさらとナルトとサスケがいなかった時のことを話し始める。



「それ、結局どうしたんだ。」



 サスケは眉を寄せながらサクラに尋ねる。

 義理堅いいのやヒナタが、昇進祝い250円で納得したとは思えない。働いている自分たちからすれば大切な友人の昇進祝いに250円は小学生でも考えにくいところだろう。



「スリッパから日常品まで必要なものを言わせたのよ。」



 サクラは腰に手を当てて、はーとため息をつく。



「・・・そういえばあの時期に細々した大量にスリッパやらクッションが増えたな・・・。」



 イタチも覚えていたのか、なるほどと納得した。



「あー、簪屋さんがある。」



 は少し前にある舶来ものと古物の簪屋を見つけ、小さく呟く。



「入るか?」

「・・・え、でもみんな見たくないかも。」




 男ばかりいるので、簪屋はつまらないだろう。は思ったが、ナルトが手を振った。




「何言ってンだってばよ。気にすんな。見ていこうぜ。」




 の結婚祝いも買う予定なのだ。がもしかしたら簪屋で好きなものを見つけるかも知れないので、見るだけだったとしても見るべきだろう。




「サスケとナルト、サイも見ておいた方が良いさ。少し女の子の見そうなものの勉強もしておけ。将来のために。」




 イタチは苦笑してサスケ達を振り返る。




「・・・それがもてる秘訣ですか?」




 サイが不思議そうに首を傾げた。

 イタチは結構外ではもてる。決まった相手がいるため告白されるなどは少ないが、それでもそう言った経験は多いし、噂も聞く。

 もちろん容姿や優秀さも大きなもてる理由だろうが、柔らかな物腰やに見せる思いやりは上忍からも好感を持たれている。




「考え方が違うからな。それを知っておくのは大切なことだ。」

「で、イタチ。それは誰の受け売りなの?」

「斎先生ですよ。」




 カカシが笑って尋ねれば、あっさりとイタチは白状した。




「斎様、もてるらしいですね。」




 サイも納得したように、頷いた。

 の父・斎は30歳を軽く超しているが相変わらずの童顔で、その容姿は20代にしか見えない。すらりと背が高く、柔らかな物腰と親しみやすい人柄で人望も厚い。もちろん実力も火影候補に挙げられるほどだ。

 妻子持ちだが、相変わらずもてる。




「確かに、姫のお母様の蒼雪様、美人ですよね。」




 サイはちらりとを見る。

 の母蒼雪は炎一族の宗主として有名だが、小作りな顔のパーツに柔らかな銀髪ときりりとした灰青色の瞳の鋭利な印象の艶やかな美人だ。




「う、うーん。でもわたし、父上似だから、」





 の顔は誰がなんと言おうと親子と分かるほど、性別を超えて父親にそっくりだ。母親の面影は生憎全くない。

 母のお腹から出てきたことは間違いないが、もう少し似ていても良いんじゃないかと思う。




「俺なんか髪の毛父ちゃん、顔母ちゃんだぜ。母ちゃん美人だけどな!」




 ナルトはにっと得意げに笑う。

 忍界大戦中に知ったがナルトは父の兄弟子であった4代目火影ミナトと母の友人であった前の九尾の人柱力のクシナとの子供らしい。

 道理での父・斎がナルトの後見人であったわけである。




「俺は、母上って感じだな。特に髪質。」

「・・・俺は父さんか・・・。特に髪質。」




 イタチとサスケはそれぞれうーんとお互いの顔を確認する。




「まぁハンサムだから、良いんじゃない?」




 カカシはあっさりとうちは兄弟の杞憂を適当にいなす。ちなみにカカシは正直父親似である。




「ふーん。僕は分からないけど・・・」

「サイもハンサムだから、きっと父上か母上が美人だったんだよ。」




 がサイに慰めるように言う。両親の顔を知らないというのは忍ではある話だ。




「あれ?、ハンサムなんて分かるの?」




 サクラは意外そうにの肩を叩いた。

 実はは顔立ちの好悪があまりない。恋人のイタチが結構ハンサムなのだから面食いかと思えば、全くそうではない。むしろ気にしていないと思われる節が沢山あった。




「一度聞いてみたかったんだけど、もしイタチさんがいなかったらどういうタイプが好みなの?」

「え?んー、顔?性格?」

「どっちもよ。」 




 サクラが言えば、は真剣に悩み出す。




「・・・・んー、顔はねぇ・・何でも平気かも?」

「ゲジ眉でも!?」




 ナルトがの発言に驚いての肩を掴んだ。はんーとまた悩んだが、不思議そうにナルトを見据えた。




「え?悪いの?目鼻立ちぱっちりしてて良いんじゃないの?」

、おまえ、今日にでもすぐ眼科に行け。写輪眼の視力低下云々以上に、おまえやばいぞ。」




 サスケは真剣な顔でに突っ込む。



「・・・イタチ、おまえ、に対して性格良くて良かったね。」




 カカシがぽんっとイタチの肩を叩く。




「なんかそんな気もしてたんですけどね。」

「え?知ってたの?」

「知ってたって言うか、・・・雪さん、人の顔の美醜の区別つかないんですよね。」 




 イタチは軽く額を押さえる。

 の母の蒼雪は昔から幼なじみの斎のことが好きだったらしいが、顔の美醜がいまいちはっきりしないところがある。だからイタチも何となく予想は出来ていた。

 顔は似てなくてもしっかり受け継ぐところは気づかぬうちに受け継ぐという所だった。
男性による女性論と女性による男性論