は不安そうな顔でサクラをじっと見ている。サクラはカルテをじっと見て、内容を確認している。突然が倒れたとの話を聞き、慌てて飛んできたサスケは、ため息をついて結果の判断を待った。
イタチは、今任務中だ。
夕刻には帰って来るが、暗部の任務であるため、すぐに連絡をやることは出来ない。代わりに呼び出されたのが、サスケだった。
兄嫁が倒れたぞ、と冗談のように、だが真剣な顔でシカマルに言われ病院に行ってみるとは検査中。散々慌てたサスケはサクラに宥められながら、に付き添って内科やら外科やら(倒れたときに頭を打っている可能性があった)を一緒にまわることになった。
で、結果。
「そうかなーとは思ってたけど、やっぱりね。」
何を納得しているのか、サクラはカルテのいくつかの項目を見ながら、うんと一人で頷く。
「おめでとう。」
「え?」
突然祝いを述べられて、は小首を傾げる。
「ま、まさか。」
察しの良いサスケは、サクラの顔を凝視する。
「そのまさかよ。おめでた、ね。」
サクラはあっさりと言って、の肩を抱き寄せる。サスケははーっと天井を見上げてため息をつくしかなかった。
結婚して、2ヶ月。
兄貴、早すぎるだろ、とサスケは今は任務中の兄の顔を思い浮かべて呟く。イタチ自体は既に22だが、はまだ17歳。少し早い気がするのはとサスケが同い年だからと言うのもあるだろう。
ただもう既に結婚しているし、炎一族の者はもとより、うちはの両親も幽閉されているがもう屋敷で暮らしているので、喜ぶだろう。問題は全くない。
「何が、めでたいの?」
は話しについて来れていないのか、サクラにもう一度尋ねる。
「だーかーら、子供がいるのよ。」
サクラはため息をついて呆れた様子で手を腰に当てた。
「え?」
現実感がないのか、は相変わらずぴんと来ない顔で首を傾げている。
「子供、どこに?」
「あんたのお腹に決まってんでしょうが。」
サクラが言うと、は自分のお腹をぽんぽんと叩く。
「・・・?」
存在を感じられなかったらしいは、相変わらずよく分からないといった顔でもう一度サクラを見上げた。
サクラは本日何度目とも知れぬため息をついて、エコー写真をに渡す。
「何これ。」
「あんたの赤ちゃんよ。」
「どれがー?」
はモノクロの写真をじっと見つめる。サスケも上からのぞき込むが、白と黒のさざ波のような場所に丸い黒の場所があり、そこに何か白くて丸いものがある。サクラがそれを横からのぞき込んで、指で示した。
「これよ、これ。」
「・・・え?これ?」
は指で示されても分からないのか、首を傾げる。
エコー写真では詳細は分からないものだが、小さめの白い丸が僅かに見えるような気がするといった程度で、人型にすら見えない。
「これが、子供か・・・?」
サスケも横から見ているが、これが人だと言われても、全くぴんと来なかった。
医療を主にしているサクラにはこれが何であるかが理解できるのであろうが、サスケやなどド素人の者たちにとっては、正直なんか、黒い中に白い塊がある。分かることはそれだけしかない。
「ちなみに、今、1センチ・・・あるかな?ってくらい?」
サクラはにエコー写真を見せながら、一センチを指の間で作ってみせる。
「一センチ・・・」
「本当にそうなのか?」
ゴミが間違えて映っただけとかではないのかと暗に言うと、サクラはサスケに怒った表情を見せた。
「この丸くて黒い場所が、胎のうって言って、赤ちゃんが出来たときに出来る部屋なの。」
「わたしのお腹にあるの?」
「そうよ。ま、まだ6センチくらいだけど。」
は言われても全く理解できないのか、不安そうな顔でエコー写真を見つめている。
「イタチさんいつ帰ってくる?」
「今日の夕方には帰って来るって言ってたけど。」
「うん。じゃあ必ず今日の夕方、一緒に来て頂戴。良いわね。」
サクラはの肩を叩く。
とイタチにとって初めての子供と言うことになる。の母蒼雪も健在であるため大丈夫だとは思うが、二人はサスケも含めて三人で暮らしており、これから手助けも必要になってくるだろうし、そう言ったこともイタチと話し合わなければならない。
はものを理解できないところがたまにあるので、イタチに話した方が早いだろう。
「サスケ君も来るのよ。」
「俺もか?」
「一緒に住んでるんだから、当然でしょ?第一一番暇なのはサスケ君なんだからね。」
サスケは数年前に里を抜け、帰ってきたので未だ上層部に信用されていないところが多々ある。そのため、任務が入るのはやサクラ、ナルトなど旧友達が隊長の時だけだ。
が妊娠によって任務に出られなくなれば、ますます任務が減るだろう。
イタチは暗部の任務で忙しく家を離れることも多いので、を支えるのは自動的に家にたくさんいるサスケと言うことになる。
「・・・うん。」
は不安そうに目尻を下げて、しょぼんと俯く。
「どうしたの?」
サクラはの顔をのぞき込む。
子供が出来るのはめでたいことだ。だがの表情は先ほどから晴れない。お腹を押さえて所在なさげな顔で目を伏せている。
腹を押さえるの手は、小刻みに震えていた。
「うーん、わかんないけど、なんか、怖いな。」
は努めて明るく言ったつもりだったようだが、声も手と同じように震えていて、の不安の大きさを物語っていた。
はそう言ったことには疎い。だから妊娠など考えたこともなかったのだろう。
確かには結婚が早かったが、もサクラもまだ17歳で、突然子供が出来たと言われても、サクラも多分ぴんと来なかったと思う。
夫であるイタチは22歳であるため、別に問題はない年齢だし、成熟しているが、にはまだ早かったのだろう。
「大丈夫よ。私も精一杯助けるしね。」
「うん。」
「そんな顔しないの。」
を安心させるように、サクラはを抱きしめる。そうしてしばらくの背中を撫でてやると、彼女も少し落ち着いてきたのか、小さく息を吐きながらも手の震えは止まったようだった。
「しばらく、任務はお休みね。」
「どうして?」
「あんまり激しく動くと赤ちゃんがびっくりして、死んじゃうかもしれないから。」
サクラはぽんぽんと二度の背中を軽く叩いて、の目を見るため、少し体を離す。の大きな紺色の瞳は、不安のせいか少し潤んでいた。
「・・・うん。」
は本当に不安そうに、頷く。喜びはどこにも見あたらず、不安の方が勝っている様子で、視線をぼやけさせている。
サクラはそれを見て、何やら自分もに当てられたのか、不安になった。
不安感