ドリーム小説







 サスケと、ナルトは母親同士が親友であったため、小さい頃から仲が良かった。特にとナルトは父親同士も親友で、両親が忍で忙しいこともあり、しょっちゅう互いの家を行き来している。ナルトとサスケは同性ということもあり不仲だが、とナルトはお互いよく話し、性格も似ているところがあるため仲もよかった。

 ただ、サスケとナルトは喧嘩ばかりである。





「サスケもナルトも、本当にうるさいわね。」





 クシナは赤くて長い髪を掻き上げ、テーブルに肘をついてため息をつく。






「やんのか!」

「うるさいってばよ!!」






 おもちゃの取り合いなのか、物を投げ合い喧嘩をしているのは、サスケとナルトである。サスケの方が3ヶ月ほど生まれてきたのが早いため、取っ組み合えばサスケの方が強い。クシナは起きてから寝るまで小競り合いを繰り返しているサスケとナルトに呆れるしか無かった。






「それに比べての静かなこと。」






 サスケとナルトが喧嘩している隣で、女の子のは気にすることも無く黙々と何かを作っている。いつもはぼやーとしていて二人の喧嘩に巻き込まれることも多いのだが、今日はお膳の上で一生懸命何かに熱中していた。





「どうしたの?。何作ってるの?」





 椅子から立ち上がり、クシナは喧嘩している息子達を避けての隣に座る。






「つる。いたちあげるの。」





 は紺色の大きな瞳をくるくるさせて、にっこりと笑う。

 7月に生まれたサスケや10月に生まれたナルトよりも、は早く生まれているが、元が未熟児であり、生まれたばかりの時に大手術を行ったせいか、他人より随分のんびりしており、言葉も拙い。両親としても生きて元気なら良いかという適当な教育方針の下に育てたため、何かを強制されることもなくこうなった。

 そして、誰よりも純粋で、素直だった。





「つる?」






 クシナは思わず首を傾げる。

 がクシナに見せるのは、いろとりどりの折り紙で作ったいくつもの鶴だった。小さな折り紙だったが、は存外子どもの割に器用なのか、それをきちんと折っていく。折り終わった鶴を糸でいくつも連ねている。





「あ、そっか。、イタチ君が大好きだもんね。」





 の父である斎に師事しているのがサスケの兄であるイタチで、は幼いながらに五歳年上の彼に恋心を抱いていた。クシナから見ても可愛いくらい素直に慕っている上、実はイタチの方もまんざらでは無いらしい。


 初々しい二人は知らないだろうが、母親軍団の中では噂の的だ。三人の親が集まったら、その話で持ちきりである。







「うん。いたちだいすき。せんこ。」

「千も?!」

「うん。せんこで、おねがいごと?」





 千羽鶴のことを誰かから聞いたのだろう。

 ただ、のんびりしたのことだ。千羽がどれだけ多いのか分かっていないのかも知れない。数が数えられるかどうかも怪しいところだ。





は何をお願いしたいの?」





 お膳に肘をついて、クシナは一生懸命鶴を折るを眺めながら、尋ねる。





「あげる。いたちのおねがいごとかなえてもらうの。」






 は無邪気に言って、赤い折り紙を振る。







「自分のお願い事じゃ無いの?」

「いたちがにこにこはうれしいの。」




 ふにゃと崩れるような笑みを浮かべるに、クシナは思わず笑っていたが、そのの頭に、突然積み木が飛んできた。





「う?・・・あう。」







 は小さな頭を押さえたが、何が起こったかよく分かっていないらしい。





「おまえが悪いんだろ!!」

「何いってんだよ!!」





 の頭を撫でてやりながらクシナが後ろを振り返ると、サスケとナルトが積み木の投げ合いを始めていた。





「ちょっと!!あんたたちやめなさい!!に当たるでしょうが!」





 クシナは大きな声で二人の息子たちを怒鳴りつけるが、二人はまったく聞いていない。

 小さな子どもを預ける託児所が少ないため、友人でありサスケの母ミコト、ナルトの母であるクシナ、そしての母である蒼雪が交代で子ども達を預かっているのだが、段々クシナは二人の喧嘩にへきへきしていた。




「うぅ、りゅ!」





 次々飛んでくる積み木がの頭や体に当たるので、は自分の頭を抱え、最初はぼんやりしていたが徐々に表情を歪め始めた。のんびりしたでも流石に痛いらしい。

 クシナはを庇いながら、人の話をちっとも聞かないサスケとナルト思いっきり平手で殴り飛ばす。







「いい加減にしなさい!!!!」





 クシナに殴られ、怒鳴られ、正気に戻ったのか、サスケとナルトはクシナの方を見る。クシナはを片手で抱きながら、腰に手を当てた。






「人を巻き込むのはやめなさい!が怖がってんでしょうが!!」





 はクシナの腕に抱かれながらも、クシナの大声にびくりとする。お嬢さん育ちで両親ともにに向けて怒鳴らないため、経験がないにとっては怖かったのだろう。





「ご、ごめんってばよ・・・」





 殴られたナルトは叩かれた頬を押さえながら、すぐに謝った。だがあまり叩かれたことの無いサスケは未だ呆然としてクシナを見上げている。






「あんたたちいい加減にしなさい!喧嘩は良いわ。でも周りを巻き込むのはやめなさい。」






 クシナはぎろりとナルトとサスケを睨む。二人は先ほどは喧嘩をしていたのに、揃って体を寄せ合い、ひっと声を上げた。





「ただいまー。」





 明るい声と共に、ミナトが帰って来る。





「・・・あ、とうちゃんだ。」






 ナルトは母の怒りに怯えながらも、父親に目を向ける。

 四代目火影である波風ミナトはナルトの父であり、ナルトと同じ鮮やかな金髪が印象的な、穏やかそうな好青年だ。

 彼は泣いて頬が赤くなっているナルトとサスケを見て、目を丸くする。





「・・・どうしたの?みんな。」

「二人が喧嘩してに積み木をぶつけたのよ!!」






 クシナは怒りのままにミナトに叫ぶ。するとはびくりとしておどおどした様子を見せた。






「駄目だよ。クシナ。が怖がってるよ。」





 ミナトはナルトの頭を軽く撫でてから、クシナの近くで小さくなっているを抱き上げる。





「大丈夫だよ。クシナは怖くないからね。が痛くないようにって思ってるだけだよ。」

「おばちゃま。おこない?」






 怒ってない?とは不安そうに尋ねる。





「うん。クシナはには怒ってないよ。」






 ミナトはを揺すって軽くあやしてから、ナルトとサスケの前に座る。





「ふたりとも。喧嘩は駄目だとは言わないけど、周りを巻き込んじゃ駄目だよ。この間もに怪我をさせたばかりでしょ?」

「・・・ごめんってばよ。」

「ごめんなさい。」





 ナルトとサスケは素直に謝るが、二人顔を合わせると途端に喧嘩を始める。ミナトはため息をついて、の頭をぽんぽんと撫でる。




「本当に、次やったら二人揃ってご飯なしで家から放り出すからね。」





 クシナは腰に手を当ててナルトとサスケに言う。二人は言われるままに頷いた。






「今日は斎も蒼雪も家に帰れないから、は預かりでお願いしたいって言ってたよ。二人とも任務遅いんだって。」






 ミナトは話が一段落したので、クシナに言う。






「あら。ミコトも駄目らしいから、サスケも預かりなのよね。」






 クシナはサスケをちらりと見てからため息をつく。クシナがと入って、ミナトにサスケとナルトとともに入ってもらいたいところだが、間違いなく二人は喧嘩を始めるだろう。それを思えばため息以外は出なかった。









天真爛漫