「可愛いってばね!」
クシナは帰って来るなり、クマパジャマのを見て、思わずを抱きしめた。
「おばちゃま、く、くるしい…」
「可愛いーー!」
「クシナ、いい加減に離さないとが酸欠で死んじゃうよっ!」
「なんか口から出てるってばよ!!」
ミナトとナルトが慌ててクシナを止めて、をクシナの腕から救出する。クマパジャマのはすぐに意識を取り戻してぽかんとした顔でクシナを見上げた。
サスケはの背中をさすって、を現実に戻す。
「どうなったの?話し合いは。」
ミナトがクシナに尋ねる。
今日が叩かれ、その後初めて血継限界を使って反撃し、相手が火傷した事についてクシナはの親に変わって、話し合ってきたのだ。の両親は今長期の任務中ですぐには帰れない。クシナは代理だった。
「んー、平行線ね。相手はが怪我をさせたことだけを上げて悪いって言ってるけど、担任もこっちも前の痣の件とかもあるから、真っ向からって感じだったわ。」
は今まで殴られても、叩かれても絶対に手を出さなかった。痣などは保険医も見ていることで、クラスの子どもたちや担任のイルカも、が悪いとは思っていなかった。
むしろ今まで虐めてきたのだから、反撃に遭うのは当然だと思っているようだ。
対して今回怪我をしたいじめっ子の親たちは、火傷のことのみを上げて怒っていた。一応火傷の治療費はこちらが払うと言うことで落ち着いたが、向こうの親たちはを謝らせたかったらしい。
クシナもイルカもそれは出来ないと押し切ったが。
「母ちゃん!俺、明日学校いかないってばね!」
「はぁ!?」
クシナは突然言い出したナルトに詰め寄る。母親の剣幕にナルトは怯んだが、ぐっと蛙パジャマの裾を掴んでまっすぐ母を見上げた。
「、行かないって言うから、俺もいかない!みんなに連絡したし!」
「どういうことだってばね。」
「あいつらがにあやまるまで、みんなは学校であいつらボイコットして、俺らはといっしょにやすむってばよ。」
要するに自分たちはと一緒に学校を休み、友人たちには連絡して、いじめっ子たちに圧力をかけてくれるように話したと言うことだ。
「そんなうまく行くかなぁ?」
クシナは首を傾げる。いったいどんなボイコットをすれば、あのいじめっ子たちがに謝る気になるのだろうかと思う。
だが、ナルトはにっと笑う。
「大丈夫だってばよ!明日シカマルとサクラちゃんが作戦会議に来てくれるって。」
「…何でそういうとこだけは行動力あんのかしらね。」
クシナは息子に呆れたが、それでも仕方ないと腰に手を当てて息を吐いた。
「あした、シカマルとサクラちゃんが夕方に来て、会議の結果も教えてくれるってばよ。」
「…もー、でもイタチ君に教わって、勉強はきちんとすること、良いわね?」
「わかってるってばよ!」
「分かってないからあの成績なんでしょ?ちょっとはサスケ君を見習ってよね。」
ナルトの成績は相当酷い。後ろから数えた方が早く、時にはどべと言うこともあるほどだ。サスケは学年首席で、は学校を休みがちなくせに随分と成績だけは良かった。
「母ちゃん口うるさいってばよ。」
元気なナルトはクシナの言葉もろくに聞かず、ソファーに飛び乗る。はぼんやりしていたが、同じようにソファーに座っているイタチの隣によじ登り、身を寄せた。
イタチも笑ってを自分の膝の上に抱き上げる。
「可愛いわーそのクマパジャマ。、どこで買ったの?」
「斎先生とおそろらしいですよ。」
クシナの言葉にイタチが言うと、途端にクシナは嫌な顔をした。
「なんであいつと。」
「否、斎とは親子だからね。」
ミナトがクシナを宥めるように言って、弟弟子を擁護する。
ミナトとの父の斎は同時期に自来也についていた兄弟弟子で、仲も良い。だがその心はあまりクシナに伝わらなかったらしい。
「は素直でころころしててこーんなに可愛いのに、なんであいつはサボってばかりであんななの?」
「まぁまぁ。」
クシナはどうやら初対面の時、斎に髪の毛のことをからかわれた事を覚えているらしい。
――――――――――――あ、金魚色
幼い頃からクシナはトマトだハバネロだと、散々その赤い髪を罵られてきたらしいが、その発想は流石になかったらしく、言われた本人のクシナも咄嗟に呆然としていた。ミナトも一応斎に何も言わない方がよいと助言はしておいたのだが、駄目だった。
斎はいつも人の話をちっとも聞いていない。
「イタチあした、おやすみ?」
はイタチの膝の上から少し恥じらうように自分のクマパジャマのフードの耳を引っ張りながら尋ねる。
「あぁ、斎先生が帰ってこなければ多分な。」
「じゃあ、明明後日から任務だね。斎は明後日帰ってくるから。」
ミナトは火影であるため、斎の任務状況も把握している。イタチの次の任務は斎と一緒であると決まっており、彼が帰ってくるまで任務はないだろう。
「やったーぁ、、ゲームしたい。」
「ゲーム?」
サスケも座っていた椅子から飛び降りて、イタチや、ナルトが座っているソファーに歩み寄る。
「うん。ちちうえさまが買ってくれたよ。よの?だっけ?」
「UNOな。」
イタチが一応訂正を入れた。
「少し複雑なカードゲームさ。いろいろな効果のあるカードがあって、それを出していきながら早く手札をなくした方が勝ちだ。」
イタチは実はこのゲームを暗部で何度もやらされていた。
面倒な任務で誰が行っても良い時、親玉の斎の許可の元、トランプかUNOで、任務を負けた奴に押しつける会が始まる。
入りたての頃はそれで結構押しつけられていたものだったが、1ヶ月もすればルールを覚え、現在の押しつけ相手は最近入ってきたサイというまだ年端もいかない少年と、その兄のシンだった。
「ぜってーサスケには負けねぇってばよ!」
「はっ、おまえなんかが勝てるわけない。」
さっそく喧嘩を始めたナルトとサスケを横目に、はイタチの膝の上でこくこくと船をこぐ。どうやらは疲れで段々眠たくなってきたらしい。イタチもソファーにあった毛布でを包む。
「おまえら、喧嘩はよそでやれよ。が眠たそうだし。」
「ってよく寝るよな。授業中もいっつも寝てるし。」
イタチが言うと、ナルトが呆れたような目をに向ける。
成績は良いのだが、はいつも授業中によく寝ている。しかも酷い時には揺すっても叩いても起きないのだ。
「はチャクラが多くて、体が小さいから、一杯寝ないとそれをうまく支えられないんだよ。」
少し不満そうなナルトを宥めるようにミナトは言って、ナルトの頭を撫でる。
「ふん。オレははチャクラがなくてもいつも寝てると思うけどな。」
サスケはクールにそっぽを向いて言うが、が気になるのか、視線をちらちらとに向けていた。
最近自分の恋心を自覚し始めた彼は恥ずかし紛れにに対して酷い暴言を吐く時があった。は彼の言う意味がわからないのか、大抵首を傾げているが、少しずつ言われていることが分かり始めているので、傷ついて泣き出す時もある。
そういう時サスケはいつも慌てて謝るのだが、どうしても照れ隠しがやめられないらしい。
「…?」
は眠たいせいか、それとも本当にサスケの言っている意味がよく分からないのか、イタチの垂れ下がっている黒髪を撫でながら、ぼんやりとした目でサスケを見たが、すぐにイタチの胸にもたれて目を閉じた。
天真爛漫