「イタチは、なにがほしい?」
が唐突にそう尋ねたのは、が5歳になった初夏のことだった。イタチは目をぱちくりさせて、首を傾げる。
「別に、ないぞ。」
「だめー、なにか!」
はなおも言いつのる。
一体何の我が儘だろうと思ったが、難問だ。一体どうすれば良いのかとイタチが戸惑っていると、たまたま東の対屋を横切ろうとしていた斎が「あぁ、」と声を上げた。
「悩まなくて良いよ。誕生日の話だよ。イタチの。」
「え?あぁ。」
任務が忙しくてすっかり忘れていた。
斎はそのまま庇を通り過ぎて寝殿の方へと歩いて行く。残されたイタチはの意図が分かったところで、どうしようもなかった。イタチは幼いに買えるような欲しい物など無い。ましてやチャクラが多すぎてすぐに体調を崩すが外に出ることは基本的にない。
なんと言ったら良いのだろう。
「がくれるものなら、なんでも良い。」
イタチが返したのは、そんな単純な言葉だった。は一瞬きょとんとしてから、目尻を下げる。
「わかった…」
困ったような、悲しむようなそんな雰囲気の台詞が何やら可哀想で、イタチはを抱き上げた。
「俺の誕生日なんてそんなに気にしなくて良い。」
「どうして?」
「どうせ任務だ。」
この年になってしまえば、任務を誕生日だからと休み訳にはいかない。親は一応ケーキなどを作ってくれるだろうが、あまりぴんと来ない。友達も少ないので、家族以外なら師である斎からプレゼントをもらうくらいだ。
気にするような行事ごとではない。
「じゃあ、任務が終わったら、くる?」
「そうだな。斎先生が毎年プレゼントをくれるから。」
斎は大体毎年くれる。今年も取りに来いと言われているので、任務は別だがその日の任務の帰りに寄る予定になっていた。
「うん。もあげたいから。だからきいたのに。」
は少しすねたように唇を尖らせる。
「よろこんでほしいもん。」
だってあなたが好きなんだもの
( だからあなたがよろこぶなにかをあげたいの )