「はーえまはどーしてとおなじいろない?」




 が自分の髪の毛を引っ張って、蒼雪に尋ねたのは、が3歳になったばかりの頃だった。




「?」




 娘の言っている意味が全く分からず、蒼雪は首を傾げる。するとの面倒を見ていたイタチが、代わりに口を開いた。




「俺と両親は髪も目も一緒の色なのに、自分が母親と違うのが不思議らしいんです。」




 うちは一族は一般的に黒髪黒い瞳であることが多い。イタチもそうだし、サスケやイタチの両親も同じだ。

 しかし、の髪はまっすぐな紺色で、大きな紺色の瞳をしている。と父親の斎は同じ髪と目の色だが、母親である蒼雪は桃色がかった銀髪をしており、髪質も柔らかで波打っている。瞳の色も灰青だ。確かに全く似ていない。




「確かにそうですわね。姫宮は面白いくらい斎に似ちゃいましたから。」




 蒼雪は笑って、の前に膝をつく。はとてとてと駆け寄って、母親に強く抱きついた。

 炎一族の宗家、特に白炎使いは銀髪であることが多い。蒼雪の父もそうだったし、異母兄もそうだ。色の薄い銀髪に、灰青色の瞳だ。





「なぜ?」




 は悲しそうに目尻を下げて、母を見上げる。どうやら自分と母親に繋がりがないのではないかと、不安に思っているようだ。




「ごめんなさい。」




 イタチは申し訳なさそうに蒼雪に言う。どうやらイタチが言い出した一族の容姿の話を、が拡大解釈してしまったらしい。蒼雪はイタチに向けて首を振り、へともう一度目を向ける。

 確かに一族でそれぞれ容姿には相似性がある。

 だがは父親の蒼一族の血を色濃く受け継いだだけだ。それは別に悪いことではないし、それが母親である蒼雪とを断絶するものではない。






「確かに私と宮は全く似ておりませんわ。でも、ほら、」





 そう言って蒼雪は自分の肩に目をやる。そこにいるのは大きな鶏冠と尾羽を持つ、美しい白色の鳥だ。蒼雪の白炎の媒介である。





「貴方も一緒ですわ。」





 蒼雪はの肩を示す。

 そこにいるのは蒼雪と同じ白炎で出来た、白色の蝶だ。ぱらぱらと鱗粉を散らし、の肩を離れてぱたぱたとの周りを回る。





「いっしょ?」

「もちろん。それに貴方は」









私のいとしいおひめさま

( 私のお腹から出した子どもだもの )