ドリーム小説









同じものを一緒に見て、感想を言い合おうよ






 が珍しくホラー映画を見ると言い出したのは、サクラたちがその話題を出したからだった。




「無理、しなくて良いぞ。」





 イタチは髪を掻き上げて、小さなため息をつく。

 真剣な顔でテレビを睨むの目尻は完全に下がり、腕に抱かれているひよこのぬいぐるみはへしゃげている。まだ映画を見る前にもかかわらずだ。

 実は、昔からお化け屋敷やホラー映画は大の苦手だった。

 元々暗いところが苦手だというのもある野だろうが、ひとまずお化け屋敷に入ればイタチの腕にしがみつき、大抵一度も顔を上げない。それなのに声や気配だけでびびる。ホラー映画を見れば寝られず、夜中に起きたりするのだ。

 小さい頃からそんなを知っているイタチとしてはやめた方が良いと思うが、の決心は固いらしい。




「がんばる。」

「否、そんなことに頑張らなくて良いんだがな。」




 イタチはそう言いながらも、テレビを仕方なくつけてDVDをデッキの中に入れてから、座る。二人暮らしをしているので、狭い部屋には二人だけ。隣の住民はどこかに行ってるのか、生活音は聞こえない。もう外は暗いので、どうも閑散とした部屋には恐ろしい雰囲気がある。


 サクラが渡したもののせいか、幸い内容はスプラッタ物では無かった。

 しかしは恐がりであり、イタチにしがみつきながらもやはり内容が気になるのか、目をつぶったり、画面を見たりを繰り返していた。





「ひっ、」





 井戸から髪の長い女が出てきたのにびっくりしたは、悲鳴にもならない引き連れた声を出す。驚きすぎたり、怖くなると普通の女ならきゃーと一声上げるだろうに、は声が出ないタイプらしい。イタチはの様子を観察していたため、ほとんど映画事態は見ていなかった。

 終わった後、は青ざめた顔で、イタチを見上げる。






「怖かった・・」

「…そうか?」





 結局髪の長い女の呪いだったのだろうが、どうにも終わり方が納得出来ず、ぴんと来ない。演出は良いのかも知れないが、イタチはそれ程怖いとは思えなかった。

 だが自分の腕にしがみついているにとっては違ったのだろう。




「だって、井戸から人が出てくるんだよ…そ、そんな、」




 は言葉を失って、かたかたと震えていた。

 イタチは可哀想だからとを抱きしめたが、どうにも納得出来なかった。一体どうして井戸から人が出てくるとそんなに怖いのか、イタチには理解できない。

 別に井戸を垂直に上がろうと思えば、忍なら誰でも出来るだろう。もちろんも出来るはずだ。

 何が怖いのか、イタチにはよく分からなかった。