うちはイタチはどちらかというともてる方の人間だったが、非常に人付き合いが苦手なタイプだった。





「あんまりイタチって人と飲みに行ったりしないよね。」





 カカシがふと口にしたのは、当たり前の疑問だった。途端に待機室で帰ろうとしていたヤマトやゲンマがぴくりと動きを止める。

 普通面と向かって聞かないだろう。





「…突然なんですか。」

「いやだって、あんまりそういう姿見ないから。」

「新婚に言います?」

「前からだろ?」





 イタチは数ヶ月前にと結婚したばかりで、数日前にの妊娠も発覚した。

 新婚で早く帰りたい気持ちは分かるが、元々イタチとは結婚前から同棲しており、それを言ってしまうならば、同棲前もイタチはの実家に居候し、結果的に一緒に暮らしていた。それがあまり飲みに行かない理由にはならない。




「父上とは行きますよ。」






 イタチは言い訳のように口にしたのは、実父ではなく義理の父親の方だ。

 イタチの師でもある斎は確かに明るい人物で、人望もあり、カカシもよく飲みに行く。どうやら彼は時々イタチも連れ出すらしい。それはあまりに当然のことで、だが、イタチがそれを嫌がっていないことが分かる。





「確かに、イタチって任務が終わると風のように帰って行くよね。」 




 ヤマトはゲンマと顔を合わせて、イタチに言う。声をかける暇もないほど、早く帰っていくのがイタチだ。だから帰りに誘う暇がない。




「家にがいますんで。」

「びっくりするくらいの愛妻家だな。おまえ。」




 即答するイタチにゲンマは呆れも混じったため息をついた。 

 確かにとイタチは里でも有名なほど仲睦まじい。二人の実力も里内で10指に入る程だが、それだけでなく二人とも有名な一族の出身で結婚にも多分に政略的な装いが含まれるというのに、誰もそんなこと思わないくらい愛し合っている。

 要するにイタチにとって誰かと飲みに行くよりも即家に帰ってに会う方が大切と言うことだ。




「イタチ、一緒に帰ろー」




 検診に行った帰りか、が待機所をのぞき込んでイタチを見ると、笑って声をかける。





「あぁ、体調はどうだ。」




 尋ねるイタチの目は日頃では考えられないほど優しげで、穏やかだ。優れた忍であると言うことすらも感じさせないほど、普通の妻を思う男だった。










二人並んだ姿を一言で表すなら、

( 相思相愛の ただの若い夫婦 )