イタチが親から離れてしまったのは、花見の最中だった。
「・・ごめん。」
サスケは目尻を下げて兄に謝る。
今日イタチ、サスケ、は互いの両親と共に皆でこの木の葉有数の桜の並木で、花見をしに来た。ところが花見の最中にサスケが調子に乗って別の場所に走り出し、そのまま人の集団に巻き込まれたのだ。を背中におんぶしていたイタチはすぐには追うことが出来ず、それでも弟を放って置くことも出来ず、を背負ったままサスケを追いかけた。
「人多いな。」
人混みをイタチはをおんぶしたままかき分ける。
今日は日曜日と言うこともあり、露店も沢山出ているので人も多い。まだ子どものイタチとサスケにとってはなかなか辛い状況で、結局道の端にはじき飛ばされてしまった。
「、大丈夫か?」
は体が弱い。今日は体調は良いようだが、いつ変わるとも知れず、不安になってイタチが背中にいるを見やると、はぎゅっとイタチの首辺りにつかまる力を強めた。両親から離れてしまったため、少し不安になっているようだ。
「大丈夫。すぐ戻れる。」
「ほーと?」
「あぁ、本当だ。」
とはいえ、人が少し減るのを待つしかない。
「ごめん…。」
「気にするな。俺も目を離したのが悪い。」
サスケが項垂れるのを見て、反省しているのならイタチが怒ることは何もなかった。そもそもに気をとられて弟を放って置いたイタチも悪いのだ。それに言ってしまえば、お酒に夢中になりすぎて子ども達を放って置いた両親も同罪である。
「も大丈夫?」
サスケは心配そうにを見上げる。の体調を心配してだろう。
「だいじょうぶだよ。きょうは、へいき。」
はサスケを気遣ってか、自分が親と離れて不安なのは隠して、ふにゃっと笑って見せる。イタチはそんなを見て「ありがとう」と言いたくなった。本当なら親と離れ、不安な気持ちはサスケと変わらないだろうに。
「もうそろそろ行くか。」
少し人が減ったような気がしたのでイタチはを軽く揺らしてから、サスケに手をさしのべる。
「今度は離れるなよ。」
ふたつの掌の間をやさしさが行き来する
( やさしい両手 )