それは小さな誕生日プレゼントだった。
「わぁ、可愛いね。」
繊細な銀色の装飾のための帯締めで、緋色の石が銀の鎖の間にところどころちりばめられている。控えめな印象で今のがつけるには少し大人びていたが、帯の色合いを考えれば映えるだろう。
「少し遅れてしまったがな。」
の誕生日は既に数日過ぎてしまっている。
自分が思いを寄せているの誕生日だから、イタチもかなりプレゼントは考えた。ましてやは今年から下忍になる。アカデミーをもうすぐ卒業する予定で、そういう点では少し大人になった。だから今までとは違うものを上げたいと思ったが、考えすぎてしまっていたらしい。
悩みに悩んだ末に、買ったのがこの帯締めだった。
「そんなの良いよ。すっごく可愛い。」
は弾んだ声音で言う。
幸い気に入ってもらえたようで、イタチは安心する。とはいえ、イタチの贈り物をが嫌がったことなどイタチもないのだが、今回は考えただけあって、喜びもひとしおのようだ。こちらも時間をかけただけのことはある。
「父上なんて、わたしにぬいぐるみをくれたんだよ。」
「ぬいぐるみ。」
「この丸いひよこ。」
は自分の膝を占領するほどの大きな丸いぬいぐるみを唐櫃から引っ張り出す。
「それは、ぬいぐるみか?」
丸いクッションにしか見えなかったイタチは首を傾げたが、どうやらぬいぐるみらしい。
「可愛いけど、すっごくかわいいけど。この年になってぬいぐるみはちょっと。」
は丸いものが好きだ。だからこのひよこのぬいぐるみを喜んでいないわけではないのだろう。だが完全に子ども扱いをされていると分かるから、いやなのだ。例えこのぬいぐるみがの好みに合っており、可愛かったとしても。
「昨日短冊街に行った時に見て気に入ったんだ。」
短冊街には舶来ものの珍しい品々が集まってくる。その中にはもちろん目が飛び出るほど高いものもあるが、へと買ったこの帯締めのように少し変わった繊細な装飾品も存在する。その中からそれ程高くないが普段使えそうなものを選んだ。
「うん。イタチ大好き!」
はそう言って満面の笑みでイタチに抱きついてくる。
の笑顔が、イタチはすごく好きだった。心の底から笑っていると思えるほど、清々しくて無邪気で、無垢で、自分のように分かっていて微笑みを形作るのではなくて、自然と口元に浮かぶもので、それを眺めるのがイタチは好きだった。
いつもの笑顔がいちばんかわいいよ