妊娠時も、子供が出来てからも、マダラとが違う部屋で眠ったことはない。何度か別の部屋を侍女から勧められたことはあるが、マダラがそれを受け入れることは絶対になかった。だから当然、体調が許せば体を重ねるのは、常のことだ。

 蒼一族では女性が成人すると、髪を段々に切って、一つに束ねるのが風習だ。直毛であるの紺色の髪は段差が際立ち、美しい。それが白い肌を滑り、美しいコントラストをなす様を見るのが、マダラは好きだった。



「・・・はっ、あ、」



 少し苦しそうに喉を震わせ、声を漏らす。解かれ、褥の上に広がる紺色の髪に手を絡め、マダラは小さく笑った。



「っ、あんま、り、みないで、」



 マダラに見下ろされているのがわかったのか、は眉間にしわを寄せ、目尻を下げて顔を背けた。



「おまえな、」



 見ないでなんて、今更だろう。マダラはあらわになった首筋に口づける。吐息が当たるのがくすぐったいらしく、はまた小さく声を上げて肩をすくめた。声を発したその桜色の唇に軽く指で触れると、はそれに応えるようにマダラの方へと向いた。



「マダラ、さん、」



 声とともに、細くて白い腕がマダラの首に回される。



「なんだ、」



 そう問いながらも、してほしいことはわかる。唇を重ねれば、ぬれた柔らかい感触。首の後ろに回されたの手が素肌にくすぐったい。

 マダラは間近でのゆらゆら揺れる紺色の瞳を見下ろす。

 痛みは感じていないようで、紺色の瞳は涙で濡れているし、少し苦しそうではあるが、表情に悲痛さはない。

 最初の頃はマダラが彼女の中に入るだけで痛みを感じるのか、必死で悲鳴を押し殺していたが、今は艶やかな声を抑えることもできずに漏らす。中は相変わらずきついがそれでも柔らかく濡れていて、引き攣れることもない。

 彼女は若いが、たぶん非常に妊娠しやすい体質だ。

 多産はこの戦乱の世では大いに歓迎されることだし、マダラがうちは一族の頭領である限り、正妻であるの出産は義務である。だが、マダラとしてはあまりに結婚から二人目の出産がせわしなすぎて、彼女が落ち着く暇もなかったのではと心配していた。

 一人目も二人目も妊娠するまであっという間だったため、閨でのことをに教える暇はあまりなかった。だが二人目が生まれてから今までは、マダラが気をつけて外に出していることもあり、なんとか三人目の妊娠には至っていない。

 だから、夜の情事も少しずつに教えることができている。



「だいぶ、慣れたな。」



 マダラはそう言って、ぐいっとの最奥へと踏み込む。抵抗のあるそこへと強く押し入れば、は体を大きく跳ね上げ、背をそらせた。



「まっ、ひゃああ、まだらさっだ、おくっ、」



 いや、とつたない声で必死に言いつのって、体をよじろうとするから、マダラは彼女の細い腰を押さえつけ、ぐりっと子宮口のあたりを捻った。抱えた彼女の足のつま先が、きゅっと丸まり、甲高い悲鳴が耳をつく。

 ひどい圧迫感にマダラも眉を寄せたが、自然と口角は上がる。

 快楽におびえ、震える細い腹を宥めるように撫でてやれば、次に起こることを理解してか、はそれだけでびくっと体を震わせて表情を歪めた。これからどうされるかをよく理解しているからだ。

 慣れたと言ってももともと経験人数が少ないは穏やかにゆっくりと体を重ね、快楽に浸るのが好きだ。イくことにもだいぶ慣れ、恐怖は少なくなったようだが、それでも心の準備期間が欲しいらしく、ゆっくりとしてほしいらしい。

 だが、マダラはそれではイけない。




「少し、我慢しろ。」



 マダラはの額に軽く口づける。はおずおずと紺色の瞳を開いて、うかがうように恐る恐るマダラを見上げてきた。少し罪悪感はあるが、こればかりは経験の差だ。仕方がないだろう。



「悪いな、」



 一応小さく謝り、その桜色の唇に自分の唇を重ねる。口づけを深くすると同時に彼女の足をぐっと広げ、つながりを深くすると、亀頭が彼女の奥をぐっと押したのがわかった。押さえつけた躯が大きく跳ね上がる。



「んう、ひゃっあああ!いやっ、や、まだっ、らめ、だっ、」



 高い悲鳴。同時に見開いた紺色の瞳から涙が飛び散る。それをお構いなしに挿入を繰り返し、子宮口を捻れば、は半狂乱になってマダラを止めようとした。だが、そんなことで止まれるくらいなら、こんなことをしていない。

 衝撃に耐え切れず、背中を反らせ、泣きじゃくる小さなを押さえつけるのは難しくない。


「やっ、はぁう、やああっ、ゆるっ、し、ぃやぁああ、」



 躯で、そして頭で処理しきれない激しい快楽は、気持ちよさを通り越して苦痛で、毒だ。はまだそれを簡単に受容できず、だが躯はその快楽を簡単に受容するため、心と躯がついて行けず、乖離していく。それがまた苦しいのだろう。

 ただし前は痛みに泣きじゃくったり、気絶したりしていたから、中で感じられ、快楽を覚えるようになっただけ、彼女の躯も大人になったと言うことだ。

 マダラは汗で滑る彼女の足を抱え直し、突き破るように奥へ奥へと進む。

 ひくひくと彼女の中が何度も痙攣を起こし、ぎちっと音が鳴りそうなほどマダラのものを強く締め付ける。もう何度も絶頂に達していることは、震える彼女の中と躯がマダラに教えてくれるが、自分の快楽を追うマダラには届かない。


「あううう、もっいって、いてるぅう、ねっ、まってぇ、まだっああ、また、またぁあ、」



 の口からあふれる甲高い声は、なかなか意味のある言葉を形作ることができないまま、ただただ部屋に響く。声を抑えようなんて発想をする余裕はの中にかけらもなく、今この瞬間ひとまず動きを止めて欲しくて、は必死で言いつのる。

 傷のほとんどない白い裸体。手足は細く、少し成長したとはいえまだまだ女性らしい丸みが足りない。それでも少しふくよかになった胸がマダラの動きに合わせて揺れる様は扇情的で、その身体的なつたなさもまた、ひどい背徳感を伴ってマダラを煽る。

 行き場のない小さな手が、褥をきゅっと握る。その様すら健気で、哀れで、どうしようもなくそそられる。



「はっ、良いなっ、」



 少し息を乱してマダラは一瞬動きを止めて、邪魔な自分の髪をかき上げる。汗がぽたりと落ちて、の頬を伝う。それを追うように彼女の頬を軽くなめれば、涙の味がした。

 は穏やかに、一回程度いければ満足なのかもしれないが、マダラとしてはそう簡単にはいけない。女性経験もそこそこあるので、を酔わせることも難しくないのだが、どうしても彼女を前にするとがっついてしまうし、自分の好きなように蹂躙したいという願望が頭をもたげる。


「ふっぅう、いっ、もう、また、またぁああ」



 いつもは穏やかで高いけれど落ち着いている彼女の声が、甲高くて耳につく。穏やかな彼女がこんなに乱れるのは、情事の時だけだ。



「はっ、いっ、」



 やっとマダラにも限界が間近に見え、の腰を持ち、落ちてきている彼女の子宮へとぐっと自分のそれを押し込む。褥をつかんでいる彼女の手が小さく震えていた。



「・・・また、やったな」



 荒い息をため息で整え、マダラはを見下ろす。気をつけて避妊しようと考えていたのに、快楽に負けたのはまさにマダラの方だ。

 結合部を見れば、わずかに白い液体があふれ出しているのが見えて、二度目のため息が漏れる。動きを止めても、ぴく、ぴくんっと躯を振るわせる彼女の中から出るには、少し時間を空けた方が、彼女への負担は少ない。

 背筋を通ったのは、たとえようのない高揚感。



「まずいな、」



 マダラは少し目を閉じてから、三度目のため息をつき、を見下ろす。何度もいって躯が敏感になっており、マダラのわずかな身じろぎでも感じるのか、は苦しそうに体を震わせた。眉間には深い皺。日頃はないものなので、褥を握りしめ、震えている小さな手に自分の手を重ねてそこに口づける。

 マダラは苦笑して、ゆっくりと自分より熱くなっているの躯を抱きしめ、そのまま躯を自分の上へと持ち上げた。
熱帯夜