激しいマダラの行為に、いつもはついていけない。

 何度もいってしまうため、マダラがいく頃にはもうへとへとで自分では処理できない快楽に落とし込まれ、頭は真っ白だ。早く終わりたいのに何度もイったため、躯だけは敏感になっていて反応してしまう。そうなるとマダラのものをこれ以上ないほど感じ、かみしめてしまうので、抜いてもらうのすら苦しい。

 それを知ってか、マダラはゆっくりとの躯を自分をいれたまま抱きしめ、そのまま布団の上に座った。



「はぁあ、っうう、」



 そっと動いてくれようとしたのはわかる。だが敏感な躯は騎乗位になればマダラを奥まで受け入れることになるため、苦しい。またいきそうになり、体を震わせると、宥めるように背中を抱きしめられ、撫でられた。

 躯がぴったりと彼に寄り添い、汗ばんだ躯が重なるのが温かい。

 マダラの大きな手が導くままに、彼の肩に頭を預けると、お互いを隔てるものはなくなる。彼の躯も熱い。だが自分の躯も熱い。体温を分け合うような安心感に、快楽に落とし込まれてパニックになっていたの躯が、徐々に落ち着きを取り戻す。



「あった、かい、」



 こうして彼と穏やかに躯を沿わせるのが好きだ。

 激しい行為はついていけないし、苦しくていつも死んでしまうような気がするが、こうして彼と体温を分かち合うのは心地よいし、何より安心する。

 少しマダラがを揺さぶる。それに先ほどのような激しさはない。



「あっ、ん、ん、」



 はマダラと躯を沿わせたまま、小さなあえぎ声を上げた。

 先ほどのように恐怖と快楽で頭が焼き切れそうなほど強い衝撃はなく、少しずつ躯の熱が煽られていく。それは心地よく、怖くない。



「大丈夫か、」



 向かい合っているため、マダラの表情がこれ以上ないほどよく見える。それは彼の瞳にも自分が映っていると言うことでとても恥ずかしい。



「あ、みっ、みないで、」



 自分で顔を隠そうと手を交差させれば、大きな手に頬を撫でられた。顔を近づけられれば、口づけられると予想でき、仕方なく自分の手をマダラの方へと伸ばす。



「まだっら、さん、んっ」



 呼吸をすべて奪うような口づけは苦手だが、重ねるのは温かいから好きだ。

 どろどろに溶け出してしまいそうほど気持ちよいのに、激しさはない。ゆっくりと追い詰められていく。でも、躯が徐々に持ち上げられていくため、怖くない。こののペースに合わせた行為は、マダラに快楽をもたらすものではないだろう。だが激しさの裏返しなのか、彼はこうしてを甘やかしてくれる。

 彼の上にのっているので、自分の怖さに応じて気持ちの良いところを外したり、逆もできる。だから素直に自分のペースで快楽を求める。それはひどく恥ずかしいことだし、マダラもわかっているだろう。だが、あえて口には出さないし、それを考えるだけの余裕がどんどん消えている。



「あぅ、んっっ、」

「良いか?」

「う、うんっ、うんっ、」





 きもちい、熱くて気持ち良い。いつもなら恥ずかしさのあまり頷くなんてできないだろう。だが今は素直になれる。余裕なく、こくこくと首振り人形のように頷けば、マダラはの髪に手を差し入れ、後頭部をくしゃりと撫でてくれた。

 マダラの大きなものが自分の中を浅くえぐる。先ほどのような深さはないが、少しずつ煽られる感触がなまなましく頭に伝わって、それが例えようもなく気持ちよい。

 最初の頃はあんなに痛くて、苦しいばかりだったのに、信じられないくらい簡単に、躯は彼を受け入れるようになった。きっと心も同じだ。

 少し動く速度が速められる。



「っ、ああ、あんっ、」



 ゆっくりと煽られる。先ほどと同じように、頭が真っ白になって何も考えられなくなる。だが先ほどのように断続的に頭が真っ白になって、火花が散るような激しい感覚ではない。深く、白く視界が染まり、はマダラの背中に手を回し、彼の肩に自分の頬を押しつける。

 頬を伝う涙が熱い、何も考えられなくなる。でも温もりは確かに感じる。



「あ、ああああ、いくっぅ、いっっっ」



 声がかすれ、ひゅうっと息が止まる。体が硬直し、痙攣する。ゆっくりゆっくりその感覚を迎え、そして波が引くように、遠ざかっていく。それでも温もりは確かにそこにあって、はほっと安堵の息を吐いていた。


 先ほどマダラに激しく求められた時のようなどうしようもない躯の敏感さは遠ざかって、ただ躯を重ねている、温もりを甘受するだけ。

 するとやっと、マダラがの躯から抜ける。は小さな声を上げたが、先ほどのような燻る熱を煽るような苦しさはもうなかった。

 自然と、口元に笑みが浮かぶ。



「あ、なんか、しあわせ」



 はもうよく覚えていないけれど、母の腕の中というのは安心できて、温かくてこんな感じなのかもしれないとたまに思う。きっとそんなことを言えば、マダラは困ったように笑うだろう。



「そうだな。」



 マダラはに同意して、そのまま布団に横たわる。汗で躯がべたつくけれど、少しずつ熱は外気に奪われていくため、すぐに寒くなるだろう。上布団をひっかぶる。

 腕枕をしてやり、マダラはの髪を撫でた。

 は紺色の瞳でマダラをじっと映してから、寒いのか、それともさみしいのか、いそいそとマダラの躯に自分の躯を沿わせた。裸体から体温が直に伝わる。は激しい行為は苦手だが、寄り添うことは存外好きらしい。

 体力に差はあるため、結構辛いとは思うが、いつ求めてもがマダラを拒んだことは、最初の時以外ほとんどない。嫌がるそぶりもなく、応じてくれる。



「疲れたか?」

「・・・うん。」



 の言葉は素直だった。マダラは苦笑して、の頭を自分の方へと引き寄せる。



「悪かったな。がっついて、」

「いつもそう言うでしょう?」

「まぁ、気持ち良いからな。」



 好きな女の体で、それを支配しているという感覚がが、どうしても男を興奮させる要素の一つなのだろう。が辛そうなので次は改めようと思うのだが、だいたい彼女に触れている時はそのことを思い出さない。




「良いよ。マダラさんが良いなら、」




 少しすねたようには言って、目の前にあったマダラの髪をその白い指で撫でる。



「よく言う、おまえだっていつも良さそうだろう。」

「そ、それは、」




 うわずった高い声。白い指がぴたりと止まる。染まった頬が暗い中でもわかって、マダラはわかりやすい反応に思わず笑いを漏らす。




「酷い。」

「おまえはいつもそれだ。だが、大切にしたいからな。あんまり辛ければ言えよ。」



 無理強いしたいわけではない。そう言えばは困ったような顔をして、もぞもぞと居心地が悪そうに腕枕の上で頭を動かした。



「・・・大丈夫、」




 彼女にしては珍しいその早口は、言いがたいことを言う時の癖だ。恥ずかしかったのだろう、耳まで真っ赤なのがわかって、思わずマダラは彼女の頭を引き寄せ、その赤くなった耳に口づける。笑ってしまったせいか、に髪の毛を引っ張られた。




「ひどい。」

「すねるなよ。」



 マダラはそう言いながらも、こみ上げてくる笑いが堪えられず、誤魔化すように彼女の細い体を抱きしめた。幸せだと思った。





凪の月