「ぅっ、」
口に手を当てて痛みを堪える。
躯の中にある苦しいほど大きな熱が、お腹が押しつぶされたような圧迫感を与える。
入り口が限界まで広がって、それでも足りないのかちりりと小さな痛みをにもたらす。
涙が溢れて、視界を塞いだ。
「力を抜け、」
耳元で短く告げられるが、どうやったら力が抜けるのかがわからない。は仕方なくきつく目をつぶって痛みをやり過ごした。
サスケは、慎重だったイタチよりもずっとせっかちだ。初めて躯を重ねる時は無理強いをせず、長い間待ってくれたサスケだが、いざことが始まると性急で、毎回は苦しさと痛みに息を吐くことになった。
それはが木の葉に戻り、体調を取り戻してからも、相変わらず変わりない。前より少し優しくはしてくれているが、やはり体はなかなか慣れない。もう少し、待って、とのどこか冷静な一部分が苦しさに耐えながら思う。
「何考えてる。」
不機嫌そうな声が上から振ってきて、が見上げると、綺麗な漆黒の瞳が目の前にあった。
思わず躯に力がこもる。
「考え事か?」
「ちっ、ちが、」
否定しないと別のことを考えていたのかと怒られるのでは声を上げた。
しかし、先ほど尋ねられた時に思わずサスケのものを圧迫してしまったので、どうせ口だけで否定しても同じだった。
躯の方はずっと素直だ。
「まったく、余裕だな。」
「ひっ、待って、まっ、」
軽く下から突き上げられて、腹が破れるような心地がする。
イタチよりもずっと乱暴な動きが苦しくて、は喘いで制止の言葉を何度も口にした。でも、サスケは聞いてはくれない。逃れようとしても怪我をした時足の神経を切ったので歩けないは、動けずどうしようもない。
サスケは強い力での細い腰を引き寄せ、奥までついて動かした。
「だっ、えぅ、」
奥をぐりぐり動かされると痛みがこみ上げてくる。それは強い快楽を伴ったが、には怖いし十分な“痛み”だった。
けれど、サスケはやめることなくを追い詰めていく。
「くるしっ、ひっ、ぅ、あ、あぁ、さ、さすっ、」
無意識に手を彷徨わせると、サスケの大きな手がの手を絡め取って褥の上に押しつけた。
涙が視界を塞いで痛い。
ぽろぽろとこぼれる涙は、そっと重ねられた唇に拭われた。ぽたりと汗がサスケの体から滑り落ちて、自分の方に落ちてくる。それをまるで人ごとのように頭は冷静に見ていた。
サスケが荒い息をつき、自分を落ち着けるように動きを止める。それでが酷く苦しそうな顔をしていることに気付き、そっと頬に手を沿わせた。
「悪い、」
「う、んっ、」
まだ中にサスケがいるため、は嗚咽混じりの声で答える。
サスケはが落ち着くように、何度も頬を撫でる。優しい手に、心は落ち着くけれど、躯のこわばりは全くとれない。
「くっ、中きついな。」
サスケは眉を寄せていた。
「ごめっ、うぅ、」
力の加減が出来るほどの余裕のないは、自分の髪をくしゃりと掴んで声を漏らす。
「悪いことじゃない。ただ、おまえが苦しいだろう?」
力が入って堅く薄い腹をサスケは撫でる。
ここに、自分が入っている。
日頃は柔らかな腹にこれほど力を入れているのだ。苦しくないわけがない。
「やめるか?」
浅い息を繰り返すがあまりに可哀想で、サスケは尋ねる。ここでやめるのはサスケとしても苦しいが、一人で処理しても構わない。
「だいじょ、ぶ、だかっ、ら、・・あっ、うっ、」
は首を振って大丈夫と言うが、サスケの質問にすら躯が反応してサスケの物を締め付ける。
サスケは奥歯を噛んでやり過ごした。
いつもは遠慮のない酷い締め付け方をする。たまにサスケ自身すら、痛みを感じるほどだ。中の熟れた商売女ばかり相手にしていたサスケは、自分より一つ二つ年上だというが見た目と同じく躯も幼いことを知った。
イタチと何度も躯を重ねただろうが、躯はまったく慣れていないのだ。
膨らんだ胸元も豊満とは言えず、サスケの手にすっぽりと収まってしまう。その上恐怖が先立ち、うまく快楽を拾えるほど性に貪欲ではなかった。
「少し、動くぞ。」
「うぅ、ん。」
一応告げるが、躯の力は入ったまま。ぎこちなく頷いてきた。
細い腰に手を回すと、躯がびくりと震えた。
少し動けば、入り口から卑猥な水音が漏れた。じっとしたおかげで、彼女の中がやっとサスケに慣れてきたらしい。中の上あたりを少しつけば気持ちが良いのか、とろりとした目でサスケを見上げてきた。
「はぁ、あ、うぅ、ぁ、あ・・」
感覚から逃れるように、は自分の腰を少し動かす。
それを許さず、細い腰を掴んで引き戻せば皺が寄るほどきつく閉じられた瞳が見開かれた。
現れるのは、紺色の瞳と、漏れる淡い吐息。
「良い、か?」
「う、んっ、はっ、」
珍しく素直に頷いて、何かを堪えるように一度目をつぶって、また涙で揺れる瞳を開いた。
少しは良くなってきたらしい、サスケも動きやすくなって、速度を速める。荒い息の音、体のぶつかりあう音が響き渡る。
「はぅ、あ、ぁ、」
「好きだ、」
サスケはの頬に口付けて、告げる。
愛しているという響きよりも、好きの方が率直で、サスケは好きだった。はくしゃりと表情を歪めて、淡い笑みを浮かべる。その幸せそうな笑みが、何よりも愛おしいと思う。
「わ、ぁ、あぅ、ん、わた、わたしっ、も、」
苦しい息の中でがサスケに握られた手をぎゅっと握り替えしてくる。必死の様子に、サスケも強く握り替えした。
「あぁ、」
短く答えて、サスケはの額に口づけ、それからの桜色の唇に自分のそれを重ねた。
これから、どうなるのかはわからない。
は体が悪く、いつまで生きていけるのかすらわからない。サスケとて里によって処刑されるかも知れない。十分に考えられることだ。それでもこの温もりも、体も全部覚えておきたい。
そう、心から思った。
時間を惜しむように