空は高くて明るくてきれいだけど、あの瞳を思わせるその色は少しだけ

 サスケが待っていると、シカマルの父親であるシカクに車椅子を押されてが部屋から出てきた。

 最近彼女は上忍会で図面を書いたり、地形図を作る任務に携わっている。透先眼で簡単に視て作ることの出来るそれは、しかし暗部の偵察を同じくらいの意味と価値がある。上忍会はいつしかの能力を重宝するようになり、週に2回の上忍会には必ず出席するようになっていた。

 その代表者が、シカクだった。





「迎えか。」 






 シカクはサスケを見ると、少し複雑そうな顔をした。

 息子の同期とはいえ、サスケは今の軟禁中の犯罪者で、外出が許されるのは暗部つき、しかもを迎えに来る週に二回だけだ。今も処分で上層部、五影会議でも意見はぱっくり分かれており、決まっていない。とはいえ、がサスケと恋人同士であることも、里の中では有名となっていた。

 まぁもちろん、シカクも幽閉されていたを攫ったのがイタチであることは知っている。イタチの死後、がサスケと恋仲になった理由も、よくは知らない。それでも仲睦まじい様子は聞いていた。





「あぁ。」






 サスケは素っ気なく言って、の上着をへと着せる。

 彼女は熱に強いが、寒さに弱い。もう6月で別にそれ程寒いわけではないが、それでも梅雨が近づき曇りの続く最近は、突然寒くなることもあった。





「では、姫、くれぐれも体には気をつけてください。」





 シカクはの前に膝をつき、言う。





「はい。」





 そう言って、ふんわりと無邪気に笑うその笑顔は、シカクよりもいくつも年下だった斎という男を思い出させる。

 の父親だ。

 シカクはいつも、彼のことを“斎様”と呼んで、敬い、頼っていた。彼の予言の力、その瞳の能力、そして無邪気で楽しそうな笑顔を見ると、複雑な戦略も、汚い忍の世界もすべて超えていける気がした。彼が幽閉されている娘を、そして後に里を裏切った弟子であるイタチのことをどう思っていたのか知らない。


 けれど、彼はきっと今もシカクに会えば、同じ無垢な笑顔で笑いかけてくれるだろう。だから、シカクはといるとほっとするのだ。あの笑顔を思い出して。







「また家内が甘いものを作ったら、シカマルに持って行かせます。」

「本当?」






 は嬉しそうに、手をそろえて笑う。






「餌付け…されてるぞ。」








 サスケは呆れたように眉を寄せたが、餌付けの意味自体が分かっていないは小首を傾げる。彼は知識豊富だが、は随分と語彙量も少ない。ふたりは全く違う性格、違う境遇を持っているが、それでも良いペアなのかも知れない。

 そんな姿を見ながら、シカクは笑った。
変わらぬ日々を