の血継限界である透先眼は、遠目以外にも様々な能力を持つ。
「この人とこの人、火の国の中にいるよ。」
我愛羅との会談が終わり、彼から渡された資料を透先眼を開きながら確認していたは、ぽつりと呟いた。
「何?」
綱手が驚いてソファーに座るの後ろから資料をのぞき込む。
資料に書かれているのは20名ほどで、その中には重要参考人のフカデを含め、多くの抜け忍がいる。手練れもいるが、たいしたことのないのも何人かいる。出身地はばらばらだ。ただうまく隠れているのかどこにいるのか分かっていなかった。
「なにか、書くものある?」
はサスケに尋ねると、彼は首を横に振ったが、綱手が自分の持っているペンをに渡した。それを持って、はじっと資料を真剣な表情で眺める。
「んっと、」
はいくつかの写真の横に情報を書き込んでいく。
の血継限界である透先眼は捜索索敵によく使われていたが、その理由は明白だ。彼女が透先眼を開いたとき死角はなく前方包囲でものを見れるだけでなく、だいたい自分から十数キロ範囲ならば近くでものを見るように問題無くすべてが見える。
外見が分かればその人物をピンポイントで探し出すことも可能なのだ。
「何人かは木の葉の近くに潜伏していると言うことか。」
大胆だな、と綱手は思うが、手練れであることを考えれば当然かも知れない。また隠れる術を使っていないところも、彼らの自信を裏付けている。
「すぐ小隊を組ませろ。の情報を元にやるぞ。」
綱手は近くにいたシズネに命じる。
「わかりました。すぐにリストアップします。」
シズネは頭を下げてばたばたと走って出て行った。その後ろ姿を見ながら、綱手はの見ている資料に目を戻した。
「他はどうだ?」
「なんか、四角いのが、ある。」
「え?」
の言葉が分からず、全員が小首を傾げたが、はサスケに助けを求めるように彼を見上げた。
「結界か?」
「…うん。見えない。」
の視界は写輪眼ではなく、本当に遠くが今目の前にあることのように見えるだけだ。もちろん結界の中を看破することは出来ない。だが少なくとも、目の前に結界がはられていれば分かるように、遠くだろうと結界をはられていることは理解できる。
「ずっと見張るのは無理だな。」
サスケは小さく呟いて、ため息をついた。
相手は警戒しているだろうが、人間である限りずっと見張っていれば結界の中から出てくるだろう。だが、に透先眼を長時間使わせるのは、チャクラをあまりに使ってはいけないと言われている現在のの体調では厳しい。
はサスケをじっと見ている。
「仕方ないな。」
サスケはそう言っての前に回り込み、の前に膝をつき、下からのぞき込むようにして間近で目を合わせる。サスケの手を握り、は大きく息を吐いて目を閉じる。
「出来そうか?」
「うん。大丈夫。」
が頷き、目を開いた途端に、ざわっと周囲のチャクラの雰囲気が変わった。の片方の瞳が真っ黒に染まったと同時に、サスケの緋色の目の片方が、紫色に変わる。
サスケは何度か目を瞬かせ、の手を握ったまま立ち上がると、すっと辺りを見回した。
「結構いるな。」
情報を覚えるようにサスケは何かを数えると、すぐにその目を元の漆黒に戻し、を見下ろした。は俯いていたが、サスケの手を握りしめてがたがたと震えている。
「大丈夫か。。」
綱手もただならぬの様子に顔をのぞき込み、強く背中を撫でた。
「う、うん。」
は自分の目尻にたまった涙を擦って、顔を上げた。
「、大丈夫だ。」
サスケはの前にしゃがみ、を抱きしめて宥める。温もりに触れれば安心できるのか、は大きく息を吐いて体の震えを止めた。サスケはそれを確認してから、ソファーに座るの隣に腰を下ろし、が持っていた書類とペンを取って追加の部分を描き込んでいく。
「今の、なんだってばよ。」
ナルトは首を傾げて、サスケを見おろす。
「あぁ、は近くにいれば他人と見た映像を共有できる。」
の透先眼は、透先眼で視た視界を他人とリアルタイムで共有できる。それに写輪眼の視界を重ねるわけだ。共有と言うよりは、透先眼を貸すというイメージの方が近いかも知れない。二つの目の血継限界をあわせれば、遠くの術、結界の中も含めてすべて看破できる。
「だが今は本人の視界がなくなる。透先眼は右左で別の動きが出来るから前は問題無かったが、」
がサスケに自分の視界を見せればの視界は奪われる。そのため前は戦う時にを傍に置き、の片目をサスケが使うことが多かった。だが今、の片目は見えていない。要するにがサスケに透先眼を貸せば、は完全な盲目になる。
それは暗所恐怖症であるにとって耐えられる物では無い。
「もちろん、怖いだろうし、あんま貸せないだろうけど、要するに誰かがの代わりに透先眼持って任務に行けば良いってことか?」
ナルトは単純に首を傾げて、サスケを見る。
の暗所恐怖症を加味しないならば、誰かがの目を借りて任務に行けば良いのだ。それでを任務に出す必要はなくなる。を里に置いておけるのなら、里の中でを守るのは非常にたやすい。の身を危険にさらす必要はなくなる。
「から離れれば、効果は消える。大体半径500メートルって所だな。」
サスケはの能力を大戦中ずっと使っていたので、よりよく理解している。
を側に置いておかないと、効果は持続しない。だからサスケも大戦の時の目を使うことは多かったが、絶対にから距離をとることはなかった。500メートルというのは敵の攻撃を避けるそれだけで忍なら超えてしまえる。ただし、かなり有益な能力であることは間違いない。
ただし、どちらにしてもが暗所恐怖症である限り、この利点は必要性があまりない限りは使うべきではなかった。
「でもどっちみち便利だってばよ…。」
ナルトは感心する。
写真と個人情報を見るだけで、一瞬にして20人中4人の暁の残党には目印をつけている。サスケが見た結界の中にも二人いるから、合計6人だ。を借りたいという他の国の申し出は妥当と言える。彼女がいるだけで、ある程度犯罪者の所在を把握できるのだ。
だからこそ、慎重になるべきだというサスケの言葉も理解できる。
暁の人間の多くが、の能力を知っているが、それがどこまでのものなのかを把握していない。慎重に動かなければの能力がこれほどに索敵に優れていることがばれてしまう。
「心配しなくて良い。」
サスケはまだ硬い表情をしているの背中をぽんと叩き、笑いかける。
「そうだってばよ。俺もサスケもめっちゃ強いんだからな!」
ナルトも明るい顔でを元気づけた。
「これからは何があっても、おまえは里の仲間だってばよ。」
「なかま?」
は聞き慣れない言葉に不思議そうに首を傾げる。言葉の意味はもちろん知っているが、使ったこともなければ、自分に向けられたこともない言葉だ。
「そうよ。貴方も里の仲間よ。」
サクラがの肩に手を置いて、同じ言葉を言った。
「なかま、って、初めて、かも。」
は言葉の響きを確かめるように反芻する。
は長らく幽閉されており、イタチに攫われて後もイタチの恋人として、彼が亡くなってからはサスケの恋人としてしか過ごしたことがない。仲間は愚か友達すらもいなかったのだ。確かに鷹のメンバーは仲間と言えたかも知れないが、それは信頼で出来ている物では無い。目的の一致で出来ていた。
だから、にとっては初めての“仲間”だ。
それはの全く知らない物ではあったが、悪い響きではなかった。
仲間